発祥の地で今年も、氷上山でベニヤマボウシ植樹/陸前高田(動画、別写真あり)
平成27年11月15日付 7面
江戸時代末期に、陸前高田市の氷上山中腹で自然変異によって生まれたとされるベニヤマボウシの記念植樹会が14日、氷上山で行われた。発祥の地を伝える環境が失われつつある中、昨年に続き2回目の活動。今年は昨年よりも成長が進んだ苗木を植えたことから、来年の開花が期待される。参加者は今回植えた計5本の苗木に、地域の名花木復活への思いを込めた。
主催は市観光物産協会(金野靖彦会長)で、陸前高田が発祥の地であることを伝え続けていこうと植樹会を企画。協会や市の関係者、住民ら約10人が参加した。
今年は5合目付近と、6合目付近でそれぞれ実施。5合目は、人目に付きやすい赤鳥居前の中央登山口に植えた。
高さは約2㍍で、樹齢は5、6年という。参加者は地面を掘り、腐葉土などを入れたあと、苗に土をかぶせた。竹による支柱で固定し、シカ被害防止用のネットで覆った。
この日は、作業開始時からあいにくの雨模様。厳しい環境下での作業となったが、参加者は枝先についた花芽を見上げながら、ピンク色に輝く開花への希望を膨らませた。
ボランティアで参加した造園業・芳樹園=米崎町=の小山芳弘代表(64)は「もともとが山の木であるから、順調に育ってくれるはず。心配なのはシカだけだね」と話していた。
6合目付近では昨年、白色の標柱を建立。今回よりも若い苗木を植えたが、シカの食害がみられたという。今年は食害対策も講じた上でほぼ同じ場所で植樹を行い、参加者の一人からは「元のようになってほしいね」との声が聞かれた。
氷上山が発祥であるミズキ科のベニヤマボウシは現在、国内に広く分布。開花時期は5月から6月にかけてで、秋には幾何学模様の実がイチゴのように赤く熟し、ほんのりと甘く食用にもなる。
街路樹や庭木として人々の心をいやす木々は、氷上山の切り株から派生したひこばえから、つぎ木などで広まったことになる。しかし、氷上山の原木は昭和5年前後に、伐採されたとみられる。
その後、残った切り株から4本が成長しているのが確認された。一時保護への動きもあったが、平成2年前後に2本が枯れ、残りの2本も衰えていったという。
「郷土の名花木」として愛着を持つ市民は多い一方、発祥の地を伝える標柱は根元部分が腐り、長らく倒れた状態となっていた。氷上山ではみられなくなったが、市内では小友町の気仙大工左官伝承館などで毎年美しい花を咲かせる。震災前の成人式では市民体育館など社会教育施設周辺にも記念植樹された。