1900人の記録を1冊に、次世代に伝える会が大股地区の記録集発刊/住田

▲ 発刊した『ここが君のふるさとだ』を手にする遠藤代表=住田町

 住田町世田米の「大股を次世代に伝える会」(遠藤重吉代表)はこのほど、大股地区の記録集『1900人の記録 ここが君のふるさとだ』を発刊した。大股地区に生きてきた〝あかし〟を保存整理して後世に伝えようと、数カ月にわたって地区内の全世帯などに取材をし、1900人の記録を1冊にまとめた。同会では記録集の発刊に続き、平成28年度には地元神社の例大祭復活、地域の歴史を案内できるガイドの養成事業を計画しており、地域の絆を強め、活性化していく一助としたい考えだ。

 

 『ここが君のふるさとだ』

 

 大股地区は住田町の西側にあり、種山高原の下方に位置する地域。戦後の昭和20年代には最も多い約170世帯が生活していたが、現在は110世帯にまで減少。10年後には100世帯を切るという予測もある。
 このような中で今年2月、遠藤代表が「ふるさとの記録を残そう」と思い立ち、住民の代表らで刊行委員会となる伝える会を設立。町職員や町議会議員を務め、長年にわたって町内の歴史、文化、産業などについて調査、執筆を手掛けてきた遠藤代表の資料などをベースに下地を作り、3月からは遠藤代表と紺野潔副代表が中心となって本格的な取材を進めてきた。
 取材では伝える会のメンバーら立ち会いのもと、地区内の各世帯やかつて大股で暮らした人々を訪ね、各家の歴史、現在の様子などを尋ねた。「現代は個人情報の時代。言葉の使い方や一行一行の記載、写真の取り扱いには注意を払った」と、取材の様子を振り返る遠藤代表。取材をもとにまとめた内容を再度、対象者に確認してもらうなどし、最も気を配ったという。
 これら各世帯に取材した内容は、地区内の集落別に編さん。このほか、大股に集落が形成された起源、種山の歴史、大股小中(幼)学校教職員などの記録を掲載した。
 また、「大地を拓き、今に生きる、明日への絆」と題したページでは、地域住民や関係者からの寄稿文を掲載。この中には「大股の恵まれた自然環境を、後の世代に残すことが私たちの責務」「子孫には『物を大切にする心』を養い、ふるさとの山河をいつまでも守って欲しい」「年寄りは知恵の塊。その知恵を生かし、年長者は年長者の立場で、年少者は年少者の立場で、相手を認めながら協力し合えば、新しい形の未来が見えてくるのでは」といった郷土への思い、提言が集まっている。
 現在82歳の遠藤代表は、「最も言いたかったのは、巻末にも記した『〝住田は生きるに値する〟の境地を改めて実感しており、〝君のふるさと〟は私のふるさとでもあった』ということ。次世代を担う子どもたちにも、地域は変貌しても400年の歴史を刻んだ事実があったことを伝えてほしい」と、記録集に込めた思いを話す。
 記録集はA4判、121㌻で400部を製作。すでに地区内や関係する世帯へ300冊を配布し、今月中には町や町教育委員会などの関係機関にも寄贈する計画。一般への頒布は行わないという。
 伝える会では、記録集の発刊に続き、来年度には「祭りの賑わいを復活・再創造する事業」と「歴史の道ガイド養成事業」の新たな取り組みも進める計画。10年余り途絶えている地区内神社の例大祭を復活させて地域の絆を深める機会にするとともに、ガイド養成では大股の歴史や文化を掘り起こし、広く発信していきたいとしている。