決断へ大詰め議論、JR大船渡線巡り両市議会

▲ 市として「BRT容認」の方針が示された全員協議会=大船渡市議会

BRT受け入れ方針を提示/大船渡市

 

 大船渡市は、JR大船渡線気仙沼盛間の本復旧について、鉄道ではなくバス高速輸送システム(BRT)というJR東日本の案を受け入れる方針を固め、25日に開かれた市議会全員協議会に示した。これまで行ってきた意見集約の結果を受けて市としての考えも「BRTやむなし」とまとめ、今後、受け入れを前提に持続性や利便性確保に向けた同社との協議を展開していく考えだ。

 戸田公明市長は全員協議会席上、「鉄路復旧を望む市民の声も少なくないが、高台移設費用負担が難しいことや、今後の人口減少などを考慮すると、現実的な選択肢とはなり得ない」と言及。

 一方でBRTについては、「鉄路より建設・運営コストが低廉なことや、地域の要望に応えられる柔軟な対応が可能であることなどから、持続的に地域の公共交通を確保していくための有効な交通手段となり得る」と評価。

 そのうえで、「市としては、BRTによる本復旧をやむを得ないとし、JR東日本から示された方針を受け入れたい」とまとめた。

 受け入れにあたっては懇談会や市議会などの意見・提言に則し、JR東日本に対して▽持続的な運行確保の確約▽現行のサービス水準維持とさらなる利便性向上策の実施▽地域交通活性化への貢献▽交流人口拡大に向けた取り組み▽産業や観光の振興による地域の活性化──という5項目の改善要望を行うとしている。

 具体的には、運行時の事故防止対策や災害時の避難対策、駅舎と周辺の環境改善の充実・強化、専用道の延伸による速達性確保、新幹線駅までのアクセス整備・改善、「大船渡線」の名称維持、BRTを活用した旅行商品の造成などの取り組みを求める。

 今後、JRに要望書を提出して同社の考え方を文書で提示するよう求め、既存公共交通機関と協調しながら実現に向けた具体的協議を行いたい考え。合わせて、市民の利用促進意識醸成に向けた取り組みも展開していく方針だ。

 議会からは案に対して異論は出なかったが、JRとの定期的な協議の場や利便性向上を検討する市民懇談会設置の必要性を指摘する声があり、市側は前向きに取り組む姿勢を見せた。

 

判断材料を求める声相次ぐ/陸前高田市

 

 陸前高田市議会復興対策特別委員会(委員長・及川修一副議長、議長を除く全議員で構成)は25日に議場で開かれ、JR大船渡線の復旧方針で議論を交わした。多くの委員は、鉄路存続かBRTかを考える上での判断材料の少なさを指摘。戸羽太市長は結論明示を避けたが、持続可能な公共交通の重要性を強調した。

 冒頭に市当局が説明を行い、これまでの議論経過や「持続可能な交通手段としてBRTがふさわしい」とするJR側の提案を説明。今後の対応は「これまで実施した市長直送便や地区懇談会、議会での意見を『そのまま持って』会議に臨む」とした。

 委員発言では、現況におけるBRT乗客数、どれほどの乗客があれば鉄路、BRTそれぞれで黒字を維持できるのかなど、詳細なデータを求める声が挙がった。

 鉄路高台ルートで費用負担を求められてきた同市207億円の内訳は▽ルート変更に伴う線路移設、新トンネル整備81億円▽橋梁、高架52億円▽軌道、土木56億円▽ルート変更に伴う地盤改良など17億円──などが明らかになっているという。仮に数十億円レベルで削減できたとしても、市として負担できる額ではないとの姿勢も示した。

 月内開催が見込まれる次回の自治体首長会議での対応について戸羽市長は「市としての結論は持っていかない」と強調。一方で、大船渡市での「BRT容認」の流れにもふれ、次回で議論が打ち切りとなる可能性を示唆した。

 さらに「仮にBRTの方向が示された場合『はい、そうですか』とはなりにくい。今後市民の意見やまちづくりの観点も含めた要望を議論する担保をいただく。そして何よりも、(JR側が前回首長会議で強調した)持続可能の意味を納得できる形で明確にしていただかなければならない」と語った。

 戸羽市長らが退席後、委員会としての対応を議論。引き続き継続調査を進める方向性を確認した。