太平洋セメントが袰下山開発の概要説明、工事本格化を前に住民へ/住田町
平成27年12月2日付 1面
大船渡市赤崎町の太平洋セメント㈱大船渡工場(日髙幸史郎工場長)による袰下山(ほろしやま)開発事業説明会は30日夜、住田町下有住の新切公民館でスタートした。同町上有住の袰下山(標高587㍍)周辺で新たな石灰石を出鉱するための開発工事を進める前に、地元住民へ事業内容や当面のスケジュールなどを説明。開発工事は一部で11月から伐採作業が始まっており、平成28年度以降に本格化させ、32年度からの出鉱を目指す。
同工場ではセメントや生コン用骨材の原料を採掘すべく、大船渡市日頃市町長岩と坂本沢、住田町世田米大平の3地区に鉱山を設け、鉱量を確保してきた。このうち、長岩では25年3月に採掘を終了。現在は残る2カ所で作業を行っており、26年度は336万㌧の石灰石を生産した。
セメント産業は原料の確保が不可欠であり、同社では中長期的な観点から、50年から100年にわたって資源確保が可能な袰下山周辺での新規鉱山開発を決定。県環境影響評価条例による環境アセスメントを実施し、23年に県や県環境影響評価技術審査会とともに環境配慮のためのガイドラインを作成した。26年には用地買収も終えた。
説明会は開発工事を進めるに当たり、地域住民らに事業内容などを示そうと同山周辺地域の6会場で設定。初日の新切公民館には、住民ら約10人が参加した。
同社を代表し、石井利夫業務部長があいさつ。「袰下山開発を通じて石灰石を安定的に確保することにより、今後も引き続き、この気仙の地で永続的にセメント製造事業を行っていきたい。全国の至るところで地方の衰退がささやかれている。その状況の中で、気仙の地で事業を継続していくことが、当工場ができる最大限の地域貢献と考えている。協力をお願いしたい」と述べた。
その後、担当者が事業内容を説明。袰下山では石灰石を採掘、破砕後にベルトコンベヤーで大平地区の既存ラインまで輸送する流れを計画している。事業計画地の面積は約190㌶。
開発工事のおもなものは、▽露天採掘の切羽造成▽表土等の堆積場を設置▽坑外に破砕プラント設置▽長距離ベルトコンベヤーによる既存ラインへの接続──の4点。ベルトコンベヤーはほとんど地中を通って既存ラインに接続するが、葉山地区(国道340号付近)には地上に橋梁を整備する。
当面のスケジュールも示され、開発工事の期間は今年11月から32年9月までを計画。すでに一部で伐採が始まっているという。その後、鉱山道路造成といった土木工事を行い、橋梁の建設、機械、電気工事の順に進めていく。
工事実施に当たっての環境保全対策、動植物の生態系に対する環境配慮措置などにも言及。環境保全対策では、粉じんを防ぐための散水、堆積場の緑化、工事車両の制限速度厳守や過積載の禁止、適正な発破規格の採用、採掘区域外に濁水を出さないために雨水を切羽内に貯蔵するなどといった具体的な手法、対処方法を示した。
参加した地域住民からは、交通安全に配慮した工事車両の通行が求められたほか、希少植物の移植方法、橋梁の構造などに関する質問が寄せられた。同社では、「今回の説明会から、交通面などといった地域住民の方々が気にかけているポイントを確認し、安全な工事につなげていきたい。住田町とも連携を取りながら、開発事業を進めていく」と話していた。
説明会は1日、両向自治公民館でも行われた。2日以降の日程は次の通り。時間はいずれも午後7時から。
▽2日=恵山自治公民館▽3日=坂本自治公民館▽9日=平沢集会所▽10日=新田地区開拓記念館