リンゴ生産学びに青森へ、大船渡在住のベトナム人実習生6人/今月下旬から
平成27年12月11日付 6面

大船渡市大船渡町に事務所を構える東北産業振興協同組合(久池井力理事長)に在籍するベトナム人実習生6人は今月下旬から最長で3年間、青森県弘前市の相馬村農協でリンゴ生産のノウハウを学ぶ。この取り組みは国の外国人技能実習制度を活用したもの。同制度の対象職種として本年度から「果樹」が追加されたことを受け、国内で初めて実現した。研修を控えた実習生たちは現在、母国や家族への思いを胸に、日本語や専門知識についての勉学に励んでいる。
国の外国人技能実習制度活用
東北産業振興協同組合では、主たる事業として外国人技能実習生共同受け入れ事業を掲げている。この事業は、外国人技能実習制度を活用して日本で各種職業技能を習得し、母国の発展に貢献したいという目標を持つ実習生たちをサポートするもの。
実習生たちは来日後1カ月間、大船渡市民として暮らしながら日本語や各職業の専門知識を学習。日本で生活する上で必要な規則やマナー、非常時の対応なども身に付ける。
同組合の営業区域は北海道から静岡県、長野県まで。7日現在、486人の実習生が在籍し、それぞれの立場で勉学や実習に打ち込んでいる。
弘前市役所農林部から同組合に電話が入ったのは今年の春のこと。農林部を通して相馬村農協の「実習生の研修を受け入れたい」という申し出が伝えられ、これを受けて8月6日、組合に在籍する実習生18人の面接が行われた。
この面接では、18歳から20歳までのベトナム人女性6人が合格。12月25日(金)に弘前市へ向かい、相馬村農協で摘果作業や選別方法といったリンゴ生産のノウハウを学ぶことが決まった。
「市や農協から要請があったのは初めて。行政から声がかかったことは信頼につながると思う。この子たちは看板娘ですね」と久池井理事長。合格が決まったあと、実習生たちに「市役所」「政府」という言葉の意味を調べてもらい、「受け入れてもらえることになった。みんな頑張れ」とエールを送ったという。
震災で妻と孫を亡くした久池井理事長にとって、孫と同年代の実習生たちをサポートする仕事は「生きがい」。「『生かされたのは、この子たちに家族と命の大切さを伝えるためではないか』と最近思うようになった」と話し、「3600㌔も離れた国から親元を離れて日本に来たのだから、3年間頑張って勉強して、母国で幸せになってほしい」と実習生たちの笑顔に目を細める。
実習生6人のうち、最年長のグエン・テイ・ハイ・イエンさん(20)は、「日本で勉強してベトナムに帰り、果物店を開きたい」と夢を語る。残る5人は口をそろえて「家族を幸せにしたい」と真剣な表情。1年目に実施される技能検定試験に合格することができれば、以降2年間も引き続き研修が可能となるため、今から試験に備えている。