伝承のあり方など議論、高田松原復興祈念公園施設検討委/陸前高田で
平成27年12月16日付 1面

展示、震災遺構の未来は
陸前高田市の高田松原地区で今後整備される復興祈念公園内の震災津波伝承施設第2回検討委員会は15日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。震災遺構に関する事務局報告では、保存方針が決まっている各建造物に加え、ベルトコンベヤー設備「希望のかけ橋」の基礎部分、奇跡の一本松近くに残るマツの株根なども市や県、国が検討していると説明。委員は伝承のあり方などを念頭に置きながら意見を交わした。伝承施設は国や県、市が共同整備を計画し、基本設計には新年度から入る。
ベルコン基礎も保存検討
委員会は6人で構成。委員長は陸前高田市の高田、今泉両地区被災市街地復興土地区画整理審議会でも委員長を務める南正昭氏(岩手大学地域防災研究センター長、工学部教授)で、副委員長は柴山明寛氏(東北大学災害科学国際研究所准教授)。
委員は小笠原裕氏(岩手日報社常勤監査役)と山口壽道氏(山の暮らし再生機構理事長)、熊谷順子氏(復建技術コンサルタント事業企画本部理事)、赤沼英男氏(県立博物館首席専門学芸員)の計4人。9月以来の開催で、この日は6人に加え、アドバイザーの本多文人陸前高田市立博物館長も出席した。
事務局からの報告では、震災遺構・遺物の検討状況が示された。復興祈念公園内にある下宿雇用促進住宅、道の駅・高田松原(タピック45)、奇跡の一本松、ユースホステル、旧気仙中学校は、すでに保存方針が決まっている。
タピック45に関しては、今も残る旧道の駅の物産館と公衆トイレ、野外ステージも検討対象に。国道45号北側にある市道跡やJR大船渡線の踏切跡も盛り込まれた。
さらに「さまざまな復興事業を象徴している」として、今泉地区からの土砂搬送で活用されたベルトコンベヤー「希望のかけ橋」の基礎部分も。市によると、当初から仮設施設として設けたものであり、吊り橋全体を残すのは難しいという。施設全体の撤去が進む中、年度内に結論を固めることにしている。
このほか、奇跡の一本松東側に今も残る被災マツの根株も「従前の松原の記憶を継承している」として検討。現在は敷地外に保管されている気仙大橋の橋脚、橋げたも含まれている。
震災遺構については、委員の一人が「実物を間近で見ることは非常に大事」と発言。別の委員は「数や何が残っているかよりも、それぞれ何を意味しているか、何を伝えるか、語る人が何を語れるかが重要」と述べた。
討議では県内被災各市町村にある伝承施設等の機能分担・連携、展示の方向性などで議論。展示は「追悼・鎮魂の思いとともに、震災津波の教訓と育まれた絆の大切さを伝え、防災意識を高める」をコンセプトとし▽導入展示▽事実を知る▽教訓を学ぶ▽復興をともに進める▽地域と交流する──のゾーン別イメージが示された。

検討委では展示の方向性などで意見交換=同
出席者からは「同じあやまちを繰り返さないために『学び続けよう』『後世につなげよう』といった視点が重要」「社会情
勢が変化すれば『教訓を学ぶ』内容も変わってくる。変化に対応できるよう、展示はもっと簡便に入れ替えやすく」「企画展
を開催できる構図が見えない」といった声が寄せられた。議事終了後は、復興祈念公園区域内の視察が行われた。
伝承施設は、現在の国道45号と同340号が接続する交差点近くに、地域振興施設と一体的に設けられる見込み。その南側に式典空間などを確保するとしている。
次回の検討委員会は来年2月の見込みで、展示計画案について議論される。計画策定を経て、新年度から基本設計に入る。完成時期は明確化されていないが、委員からは平成31年のラグビーW杯、翌年のオリンピックに合わせた発信の重要性を強調する意見が出ており、早期整備が期待されている。