千歳漁港復旧工事の契約解除、業者が履行不能届/大船渡
平成27年12月25日付 1面

大船渡市が発注した三陸町吉浜の千歳・増舘漁港災害復旧工事で、受注者から「作業船の安全確保が困難で、完成する見込みがなくなった」などとして、建設工事請負契約履行不能届が出されていたことが分かった。市は24日開かれた市議会全員協議会で経緯を伝え、契約解除のうえ再発注することを説明した。同工事は28年3月の完成予定だったが、市では1年程度遅れるとみている。
同工事は東日本大震災津波で被災した防波堤や地盤沈下した物揚場、船揚場などを復旧するもの。千歳漁港の11施設、増舘漁港の4施設について一括発注しており、指名競争入札を経て25年3月、りんかい日産建設㈱岩手営業所と5億1555万円で契約。財源はすべて国庫負担金。その後、労務単価増に対応するインフレ条項適用による変更契約を26年8月に締結し、5億4242万400円に増額された。
工期は28年3月20日まで。両漁港合わせて14施設が今年7月までに完成している。残っているのは千歳漁港の東防波堤先端部(延長19・1㍍)で、倒壊した四つの水中コンクリートブロックを撤去したうえで原形復旧するもの。
業者から出された契約履行不能届では、当初の設計図書では被災状況が十分確認できず、契約後に潜水調査を行って詳細な施工検討を行った結果、施工可能海域の現場条件などから作業船の安全確保が困難と判断。25年6月以降、代替工法案を複数出して市と協議を重ねたが、整わなかったとしている。
市では、業者側から示された代替案のうち、倒壊部分を撤去せずコンクリートで一体化させるものについて、工期短縮や施工中の防波機能が低下しない、契約工法と比べて小幅な費用増にとどまるなどの利点があったことから協議に応じ、国との正式協議に向けて準備。この中、業者側が再積算して提示した費用が本県における標準積算基準を倍程度上回る大きな額となっていたため、代替案の採用を見送った。
これを受け、業者側は完成する見込みがなくなったとして今月14日付で契約履行不能届を提出。市は契約工法では施工できないとの理由で工事続行を断念することは契約違反にあたると判断して契約解除を今月17日付で通知し、同18日に業者が受理した。
現場は外海に面しており波が荒く、岩礁もあって作業海域は狭あい。業者側の積算が膨らんだのは悪天候で稼働できない場合でも作業船を確保しておく必要があることも要因とされるが、市は「海域などの現場条件は入札時から変わっていない」とする。
市では契約解除に伴う違約金を請負金額の10分の1相当と定めているが、一括発注ではあるものの14施設は完成していることから、防波堤請負金額の10分の1の約2500万円とする考え。すでに完成した施設については出来形検査のうえ支払う。指名停止処分も課すこととしており、期間は出来形検査の結果なども踏まえ決めるとしている。
同市発注工事において、着工後、倒産などを除いて契約解除に至った例は過去にないという。現在は再発注に向けた作業に着手しているといい、完成は1年遅れの28年度末にずれ込むと見込む。尾坪明農林水産部長は「地元漁業者や漁協にご迷惑をおかけしており、今後できる限り早急に完了させるよう努める」と話している。