BRT本復旧で結論、気仙両市長がJR案容認/東京都で

▲ BRTによる復旧で結論がまとまった沿線首長会議=国土交通省

 国土交通省による第3回JR大船渡線沿線自治体首長会議は25日、東京都の同省で行われた。東日本大震災以降、気仙沼―盛駅間はBRT(バス高速輸送システム)での仮復旧運行が続く大船渡線。気仙両市の首長らが地元での検討結果を報告後、前回会議でのJR提案通りBRT本復旧の結論でまとまった。JR側は一部区間も含めて鉄路復旧の可能性を否定。BRT運行で持続可能な公共交通機能を確保する方針で合意に至った。今後は各市とJRが協議し、速達性確保や利便性向上策を進める。

 

第3回大船渡線沿線自治体首長会議、利便性向上策 各市協議へ

 

 沿線自治体首長会議は、7月24日以来の開催。委員は座長を務める山本順三国交副大臣のほか、戸田公明大船渡市長、戸羽太陸前高田市長、菅原茂気仙沼市長、千葉茂樹岩手県副知事、大塚大輔宮城県震災振興・企画部長(副知事代理)、JR東日本の深澤祐二副社長、藤田耕三国土交通省鉄道局長、内海英一復興庁統括官の計9人。

 会議は冒頭を除き非公開で行われ、1時間弱で終了。戸田市長は記者団に対して会議内容を明かし、BRT本復旧の結論と、3首長そろっての会議は今回が最後で、今後は各市や関係団体がJRと個々に利便性向上策の協議に入るとした。

 その上で「市としては、自分たちの思う方向で結論が出され、ひと安心。鉄路を断念するのは残念ではあるが、やむを得ない」と話した。今後の具体的な要望に関しては▽盛駅からの延伸による通学高校生の利便性向上▽気仙沼駅での待ち時間短縮▽急行、特急便の導入▽地域振興への協力――を挙げた。

 一方、戸羽市長は議論の中で鉄路復旧の可能性について質問したところ、「JR側の回答は『ありません』だった」と明かした。「ないものを議論しても仕方ない。利便性を高める議論を通じて、復興に寄与する形になるよう、前向きに進めたい」と語った。

 持続可能な公共交通としてのあり方や「鉄道がなくなるまち」というマイナスイメージ払しょくに関し、JR側から具体的な説明はなかったという。今後求める利便性向上策については、新幹線が停車する一ノ関駅へのスムーズなアクセスにふれた。

 山本副大臣は「地域の復興まちづくりのさらなる推進を祈念している。BRTをこれまで運行し、利便性が理解されてきているほか、利用客数の厳しい状況、鉄路では運行頻度が少ないといった状況をふまえての結論だと思う」と語った。

 深澤副社長は「持続可能、安全性、費用負担の面でBRTを提案していた中、受け入れていただきありがたい」とコメント。特に陸前高田からの要望が根強い一部区間の鉄路復旧については「BRTではまちの復興に伴ったルート変更などができているが、鉄路ではできなくなり、サービス低下につながる」と否定した。

 終了後、同省鉄道局担当者が会議内容を説明。JR側は改めてBRT本復旧を掲げた上で、柔軟なルート変更や駅の移設・新設に努める姿勢を示した。さらに速達性・定時性確保や、鉄道とのスムーズな接続、新幹線駅へのアクセス向上にも言及したという。

 気仙両市はこれまで、鉄路復旧を前提とした復興施策を展開。しかし、JR側は津波被災を受けない高台へのルート移設などを強調し、約400億円と見込む整備費のうち、270億円を自治体が負担するよう要望。さらに今年6月の第1回首長会議では減少傾向だった震災前の乗客数実績にもふれ「鉄道の特性を発揮できる水準とは言い難い」としていた。

 7月の前回会議でJR東日本は、復興に貢献する持続可能な交通手段として、鉄路ではなくBRTを提案。これを受け気仙両市では8月以降、意見集約を進めた。

 大船渡市では受け入れ方針を固め、今月18日には戸田市長がJR東日本に報告。一方、戸羽市長はこれまで「市として結論は持っていかない」と明言し、BRT容認と鉄路存続両論の市民意見を示すとしてきた。

 この日は、大船渡線と同様にBRTでの仮復旧運行が続く気仙沼線の沿線首長会議も開催。南三陸町と登米市は、BRTでの本格復旧受け入れで合意。気仙沼市は市民理解やJRとの調整をさらに進める必要があるとし、議論を継続する。被災5年を迎えるまでに結論を固める方針。菅原気仙沼市長は、大船渡線のBRT本格復旧は容認している。