髙師さんが剣道七段に、審査会20回の挑戦実り快挙/大船渡

▲ さらなる精進を誓う髙師さん=大船渡

 大船渡市剣道協会理事の髙師一郎さん(62)=大船渡町=が、全日本剣道連盟の七段審査会に合格した。挑戦を始めて10年余、20回の審査会参加を重ねて果たした悲願の昇段。「夢は80歳での八段挑戦」と語り、さらなる精進と剣道普及に意欲を見せる。
 東京都・日本武道館でこのほど行われた審査会に参加。同連盟のホームページによると1329人が受審し、合格者は247人、合格率は17・5%だった。
 まず実技があり、これに合格しなければ日本剣道形に進むことができない。1分30秒の立ち合いを2回行う実技では、随所に鋭い動きを見せた。
 「相手とお互いの気持ちが通じ合い、攻め切ることができた。これまでの審査会は1分30秒が長く感じることもあったが、今回は集中していた」と振り返る。実技を初めて通過し、続く形でも技を出し切り、待望の七段合格を果たした。
 七段審査を受けるためには、平成21年以前に六段を取得しなければならない。髙師さんは7年に取り、資格を得た13年から20回の挑戦を重ねた。「だめだと思ったことはあるが、あきらめれば今までのことが無駄になる」と、精進を続けた。
 剣道を本格的に始めようと思ったきっかけは、中学3年の冬に見たNHK大河ドラマ「竜馬がゆく」。北大路欣也さん演じる坂本龍馬の江戸・千葉道場での稽古シーンに感動した。
 大船渡工業高校で剣道部に所属。川崎製鐵千葉精錬所に入社後も稽古を続け、19歳で初段を取得した。その後、大船渡に戻りYKK大船渡営業所で勤務する中、二〜四段を習得。転勤などで60歳までの約30年間にわたり市外在住が続いたが、剣道は続けた。
 還暦を迎えて地元に戻り、現在はYKKAP釜石営業所で勤務。気仙両市、釜石市で週6日稽古に励む。気仙両市での稽古では、高段者との鍛錬に精進するとともに、子どもたちの指導にも。さらなる高みを目指し、出稽古も積極的に行ってきた。
 気仙に在住する七段取得者は現在、髙師さんのみという。今月には、陸前高田市で行われた千葉周作剣道大会の運営役として参加。大船渡市内では今月、気仙の剣道関係者らによる祝賀会も開かれた。
 八段の審査会資格を得られるのは10年後。「一度は審査会の場に立ちたい」と、今後の健康保持につながる目標がまた生まれた。
 さらに「剣道は年齢を重ねてもできる。今の日本人が忘れてしまったものが、剣道にはあるような気がする。自分も研さんに励みながら、子どもたち以外の世代も参加しやすい環境を」と話し、剣道人口拡大への貢献も誓う。