動き出す中心市街地、新たなにぎわい拠点形成へ/高田地区

 7月から順次着工可能に

 

 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた陸前高田市・高田地区の中心市街地。再びにぎわいの拠点とするために、海面高10㍍を超えるかさ上げが進められ、今年夏以降着工可能なエリアが出てくる。まずは大型商業施設の整備から始まり、その周辺部の換地、借地先が順次建設のステージに入る。借地要綱やまちなみ形成に向けたルールなどから、中心市街地の将来像が少しずつ浮かび上がってきた。かつての高田らしさと、持続可能な地域運営を見据えたまちづくり。その具現化に向けた動きが本格化する。

中心市街地整備のイメージ図

中心市街地整備のイメージ図

 

 ■□集客機能の核は

 

 市はこれまで、先行整備エリアとして23㌶にわたる中心市街地のかさ上げ工事を展開。陸前高田商工会などとの意見交換をふまえ、文化施設や震災復興施設、新陸前高田駅をはじめ公共・公益施設も配置する。商業系用地に関しては、中心部に核となる大型商業施設が立地し、その周辺の街路沿いに店舗などの商業集積を進めることで、コンパクトな市街地形成を目指す。
 大型商業施設予定地は、市が事業者に土地を貸し出す。広さは1万7411平方㍍。東側は幅員20㍍の(仮称)駅前通り線、西側は同16㍍の(同)本丸公園通り線、北側には同17㍍の(同)裏田橋通り線がそれぞれ接続する。南側には約430台の駐車場を設け、そのさらに南側を幅員20㍍の(同)高田南幹線が通る。160101-8面 本施設の設計、建設、所有
 募集対象地は、他の区画に先立ち今年7月ごろから着工可能の予定。申し込みはグループを想定しており、事業用定期借地契約を締結後、20年間賃貸する。募集は25日(月)から2月8日(月)までで、市商工観光課が受け付ける。審査や最優秀提案者の選定を経て、3月下旬に基本協定を締結する。
 提案に関する条件では「市民はもとより周辺地域からも人が集い、にぎわう中心市街地活性化の核となる集客機能を導入する」「文化・学習、娯楽、ショッピング、飲食、健康・福祉などの都市サービスを担い、陸前高田市の都市イメージ向上に寄与する施設を導入する」との文言がある。
 市では商業施設について、震災前の国道45号沿いにあった「リプル」のような規模を想定。平屋建ての構造内に食品、飲食をはじめさまざまな商業機能が集積することで誘客力を高め、市街地全体への波及を見据える。施設整備では、被災した中小事業所にとどまらない形での進出を支えようと、津波立地補助金の導入や「まちなか再生計画」認定も目指す。

 

 □■個店には「ルール」

 

 大型商業施設を囲むように配置されている商業系エリア。市は市有地を7街区に分け、個店を構える借地事業所の募集を始めた。このうち、大型商業施設の西側、南側に位置する計3街区は今年11月から、北側と東側に置く計4街区は29年3月から着工可能となる。
 中心市街地の魅力づくりに寄与する目的で、各街区ごとに整備時の「ルール」を設けた。すべての街区に共通しているのは▽住居併用店舗は生活動線と店舗を分け、別事業者に賃貸可能な間取りとする▽階数は2階建て以下▽バリアフリーに努める──の3項目。160101-8面 中心市街地整備イメージ2
 本丸公園南東側に設ける計画のかぎ型街路と、その街路南側でつながる直線の本丸公園通りでは、建物の壁面位置をそろえることで連続性・一体感の創出を図る。また、前面駐車場は設けず、各所に整備する公共駐車場の活用を促す。これにより、通り沿いの歩行者の安全が確保でき、にぎわいにつながるとしている。
 換地での整備を計画する事業者にも、同様に求める。このほか中心市街地全体で、建物の屋根や外壁などに原色系の色づかいを避けるよう促すほか、屋外広告物に関しても高さや大きさ、色などのルールを決めることにしている。
 昨年10月に開かれた高田地区被災市街地復興土地区画整理審議会の場で、市はかさ上げ地の商業・準商業エリアの仮換地案を報告。それによると、かさ上げ地のうち中心市街地として整備する商業エリア(4・3㌶)は68区画。同エリア西側に隣接する準商業エリア(5・0㌶)は74区画だった。いずれも専用店舗か業務系、住宅などとの兼用店舗での利用計画がある地権者に対する換地となる。
 借地の受け付けは29日(金)まで。その後、個別ヒアリングなどを通じて各応募者の希望街区調整・協議を行う。3月には予定借地人を公表する。原則として、着工可能時期から6カ月以内の着工を条件とする。

 

 ■□利用しやすいまちに

 

 各地に設ける市営駐車場はすべて、来客利用は無料とする見込み。いわば中心市街地全体が、一つの巨大で複合的な商業、文化施設としてみることもできる。
 昨年11月に行われた市議会と商工会青年部との中心市街地に関する懇談では、将来を見据え活発な議論が交わされた。青年部から「遊具がたくさんある公園を置けば、子どもだけでなく親たちも集まる」といった提案もあった。
 また、既存の商工会事業主だけでは不足業種が出てくることも考えられる。震災以降に立ち上がったNPO法人の活動拠点や、新たな事業進出をどう呼び込むかも今後の課題となりそうだ。

 

 大型商業施設に図書館、相乗効果を見据えて併設

 

 大型商業施設の動きで特徴的なのは、市立図書館の併設整備。商業施設を設ける事業者が整備した図書館スペースなどを、市が買収する形をとる。市教委が昨年9月にまとめた図書館基本構想では「図書館来訪者と商業施設への来訪者によるにぎわいの相乗効果を目指す」としている。
 市教委は事業者募集に合わせ図書館整備事業の設計・建設に関する業務要求水準書をまとめたが、そこから新図書館の将来像がうかがえる。延床面積は、震災前の図書館と同じ891平方㍍。設計方針によると、書架・閲覧スペースには約50席を配置。書架は一般図書、青少年図書を中心とした約3万5000冊とし、さまざまなタイプの読書環境を用意するほか、各デスク席にパソコン用電源を置く。
 雑誌などをリラックスしながら読むスペースは20席程度確保。雑誌架は100誌を想定している。
 幼児・児童スペースは約1万5000冊とし、サービスカウンターから職員が確認できる位置に配置。このほかに15平方㍍の「お話しスペース」や、展示・情報コーナーも。さらに約10席、5000冊の書架や新聞を置く地域資料スペース、会議など多目的に利用できる「サイレントスペース」、約1万8000冊の公開書庫も盛り込まれている。