昔ながらの「網張り」で、加藤さん(赤崎町)のノリ養殖/大船渡(別写真あり)

▲ 暖冬の影響で生育は悪いものの、雑草が付かずきれいに育っている加藤さんの養殖ノリ=赤崎町

 海中に竹を刺し、その間に張った網にノリを付着させる養殖法「網張り」。この手法は主に昭和初期から同30年代ころまで使われていたものだが、大船渡市赤崎町字清水の加藤一寿さん(77)は今でも網張りでノリの養殖を続けている。震災を経て昨年から養殖を再開したノリは、雑草の付着もなくきれいに成長。加藤さんは「網に雑草が付かないのは珍しい」と驚きながらも、収穫への期待を膨らませる。

 

震災経て再開、雑草なくきれいに成長

 

「雪が降ればうんと伸びるのでは」と期待が寄せられる=同

「雪が降ればうんと伸びるのでは」と期待が寄せられる=同

 加藤さんは、養殖歴50年の大ベテラン。ノリのほかにカキも育てていたが、東日本大震災による津波で養殖施設が流出。カキは「年も年だから」とやめたが、ノリの養殖は昨年から再開した。

 養殖現場は、自宅近くの作業場から船で100㍍ほど出た、〝下り松〟と通称される透明度の高い場所。2列に刺した竹の間に一反ひと張り(長さ10㍍×幅1㍍)の網をかけ、そこに付着させたノリの成長を見守っている。

 網を張って種付けをしたのは昨年10月ころ。これは〝彼岸張り〟と呼ばれ、加藤さんによると「満ち潮の状態の海面から5寸(約15㌢)下がったところに網を張ること」がコツなのだという。

 「いつもは最初に雑草が網に付いて、ノリはそれを押しのけて成長していく」と加藤さん。「今年は最初から立派にノリが付いた」と語り、きれいな網に目を細める。

 心配なのは「ノリの伸び(生育)が悪い」こと。例年、ノリは12月の中ごろに収穫しているのだが、今年は年が明けても収穫できるまでの成長は見られない。

 その原因について加藤さんは、「寒さが足りない」と暖冬の影響を指摘した。

 収穫したノリは家族で食べたり、友人や知人に贈ったりするとのことで、「雪が降ればうんと伸びるのでは」と今後に期待を寄せている。