生出で「みんなのバス」運行、運転手も地域住民/14日から外出支援実験

▲ 14日から利用が始まる軽自動車を前に意欲を見せる運転手役の住民たち=生出地区

 陸前高田市矢作町生出地区を中心に14日(木)から、東京大学復興デザイン研究体による社会実験「おいでみんなのバス」が始まる。同地区は地理的な環境で既存路線バスやJR大船渡線、タクシーの利用が難しい中、新たな外出支援策として企画。運転手を地域住民が交代で務めるのが大きな特徴で、週3回・1日2便運行し、地区内住民は事前予約すれば無料で利用できる。2月末まで行い、今後の方針を協議することにしており、取り組み成果が注目される。

 

東大主催、市が協力

 

乗客となる住民らを対象に説明会も=同

乗客となる住民らを対象に説明会も=同

 100世帯余りの生出地区は中山間地域で、路線バスの便数が少ない。BRT駅からも離れているほか、タクシー利用では費用がかさむ。車を保有している世帯は多いものの「家族や近隣住民に送迎はしてもらえるが何度もお願いするのは気が引けてしまう」との声も聞かれる。

 同研究体では、生出地区がコミュニティーとして共有車両を保有し、住民同士で送迎しあう新たな移動手段導入策として企画。既存路線バス・BRTとの組み合わせ利用を促すことで、地域公共交通の活性化も見据える。さらには高齢者教室をはじめ、地域の集まりに合わせた柔軟活用にも期待を込める。

 運転期間は今月14日から2月末まで。運転日は毎週火、木、金曜日で予約があった日のみ運行。1日2便で、「行き」の便は午前7時40分ごろに生出地区を出発し、既存バス停留所がある二又、BRT陸前矢作、竹駒の各駅などに停車する。

 路線バスやBRTの接続に合わせた運行で、高田、大船渡の両県立病院、大型商業施設や診療所が立地する見世前バス停(竹駒町)までの移動に対応。「帰り」は陸前矢作駅に午後1時10分ごろ「みんなのバス」が到着し、生出着は同40分ごろとなる。

 使用するのは軽自動車で、利用者の自宅近くにまで迎えに向かう。二又やBRT駅以外の停車場所は決めていないが、生出─竹駒間であれば基本的にはどこでも停車できる。

 運転手は地区内住民7人が交代で担う。乗車利用住民は前々日までに、担当運転手に直接連絡。無料で利用できるが、公平性の観点から実験期間中に使えるチケットを1人10枚配布。予約運行時間帯以外では、地域共有の車両として地区内移動に使用できる。

 すでに約20人が利用登録しているといい、生出地区コミセンで9日に説明会が開かれた。運転手を務める住民たちは〝地域の足〟としての成功を誓い合った。実験期間中に意見交換会を設けるほか、終了後の3月中には今後の方針について話し合いを設ける。

 事業にかかわる同地区コミュニティ推進協の菅野征一郎会長は「家族が車で通勤するため、日中に車がない高齢者も多い。高齢化社会に対応した先がけのモデル事業となれば」と期待。同研究体の羽藤英二教授は「お互いに顔の見える者同士の運行によって、地域課題解決につながれば」と話している。