人材育成、連携へ協定/陸前高田市・岩手大・立教大

▲ 協定書に署名した(左から)岩渕学長、戸羽市長、吉岡総長=陸前高田市

高田東中現校舎を交流拠点に

 

有効活用が期待される高田東中現校舎

有効活用が期待される高田東中現校舎

 陸前高田市と岩手大学=盛岡市、立教大学=本部・東京都豊島区=の3者における「地域創生・人材育成等の推進に関する相互協力及び連携協定」締結式は19日、同市役所で行われた。これまで両大学はそれぞれの活動で復興推進を担ってきたが、歩調を合わせながら陸前高田の地でさらなる人材育成などに力を入れる。平成29年度以降、米崎中にある高田東中現校舎の活用などが期待されている。

 

 締結式には、戸羽太市長や岩手大学の岩渕明学長、立教大の吉岡知哉総長のほか、陸前高田を学生らとともに何度も訪れている両大学の教授・准教授ら約30人が出席。戸羽市長は「立場を越えて連携し、学生がつどう拠点づくりをうれしく思う。協力できる部分は全力で支え、プラス志向で頑張りたい」と述べた。

 岩渕学長は「今後の復興に向けては人材育成が重要であり、地域をどう理解するか、地域に住むという価値観をどう生み出すかが重要。教職員ともども一緒につくりあげていきたい」とあいさつ。吉岡総長は「失われた自然、亡くなられた方々の記憶を次の世代につないでいく活動には、人と人が会って話をすることが大事。新しいものをつくりたい」と述べ、学生らの交流促進に期待を込めた。

 3氏は協定書に署名し、地域創生や人材育成分野における相互交流を約束。協定に掲げる目的には「陸前高田市をフィールドとし、岩手大学や立教大学が持つ教育研究資源を幅広く活用し、復興と地域創生に貢献する」「教育研究及び幅広い交流に係る拠点を設置し、人材育成や地域社会の創造を市民とともに推進する」などとある。

 岩手大学の学生数は、大学院生を加えると5000人を超える。震災以降、地域コミュニティー再建や農業技術などの支援、「岩大E_code(イーコード)」による情報発信プロジェクトの展開など、教員や学生が多面的な活動を重ねてきた。

 立教大の学生は約2万人。平成15年度から生出地区で課外教育の一環として「林業体験プログラム」を実施し、地域住民と交流を深めている。

 発災2カ月後の23年5月には全額決定として同市を「重点支援地域」に指定。翌年には市との間で連携・交流協定を結び、学生ボランティア訪問やスポーツ交流などを続けてきた。

 また、岩手大は陸前高田市に地域復興創生センター(仮称)を新設し、学生や研究者の活動拠点整備を構想化。立教大では昨年10月、同市との息の長い交流を支える拠点整備方針を明らかにしていた。

 今回の協定に基づき、今後3者による協議会を立ち上げる。高田東中の現校舎を教育拠点として活用するほか、国内外の他大学を含めたシンポジウムや教育プログラムの共同実施も検討。校舎利用は市民や他大学との交流も見据えて開かれた施設を目指し、現段階では簡易的な宿泊利用なども想定しているという。

 現在、同校は米崎町と小友町境で新校舎の建築工事が進む。移行後の活用を計画しており、平成29年4月の開所を目標としている。首都圏の私立大と地方都市の国立大、自治体という連携の組み合わせは珍しく、多様性を生かした今後の展開が注目されている。