「置き去りにしないで」 水中捜索の要望で署名活動 陸前高田市の不明者家族ら、205人の帰還願いあすから

▲ 行方不明者の家族らは、海底からの車体引き上げなど水中の捜索を求める(写真は平成25年8月、高田町で)

 陸前高田市の東日本大震災遺族連絡会は、行方不明者の水中再捜索を県警および海上保安庁に求めるよう市に請願するため、25日(月)~2月15日(月)まで署名活動を展開する。まもなく発災から5年を迎えるが、今も戻らない家族を待つ人たちは「この節目を越えれば、行方不明者のことはいっそう『過去のもの』にされてしまうだろう。これが捜索を願い出る最後の機会」と危機感を募らせ、広く署名を呼びかける。

 現在も205人の行方不明者がいる同市の遺族連絡会が、古川沼周辺(気仙町~高田町)と広田湾海底の捜索を要望すべく署名活動を始める。2月下旬開会の市議会定例会での提案に間に合うよう、集まった署名は戸羽太市長へ、請願書は議会へ提出する。

 捜索方法として願うのは、海底に沈んだままの車体引き上げと周辺調査。平成25年には釜石海上保安部の巡視艇や機動救難士による潜水捜索が行われたほか、広田湾漁協と宮城県のNPOの共同による潜水調査、およびクレーン船でのがれき引き上げなども展開された。今も県警による月命日の一斉捜索は続くが、海中での捜索活動の動きはない。

 しかし昨年7月、米崎町・脇之沢漁港海底にあった車両から男性の遺体が発見され、東日本大震災の行方不明者と判明。11月には、23年5月に見つかっていた遺体の身元が分かり、およそ4年半ぶりに遺族の元へ帰ることができた。

 これらの出来事を受け、同連絡会の戸羽初枝さん(54)=小友町=は「『今でもまだ見つかる可能性はある』と改めて希望を持つようになった」と語る。 

 戸羽さんは震災で2人の子どもを亡くし、当時43歳だった弟・利行さんはいまだ行方不明。戸羽さんと利行さんの父・吉田税(ちから)さん(81)は、古川沼を見るたび「あの下に息子がいるのでは」と考えるという。

 「今も戻らない205人を放ったまま、遺族の気持ちは置いてけぼりのまま、〝復興〟だけが進んでいく。震災から5年の今回やらなければ、あとはもう本当に〝過去〟にされてしまうと分かっている。これがきっと最後の要望機会になるだろう」と戸羽さんは複雑な心境をのぞかせる。

 遺体という証拠がない行方不明者の家族は、「もう亡くなっていると思う一方、『どこかで記憶喪失になって生きているのかも』といつまでも考えてしまう」といい、「手を尽くして捜してもらえさえすれば、たとえ見つからなくても〝納得〟することができ、追悼へ向けて気持ちを切り替えられる」と、請願実現のため署名への協力を呼びかける。

 署名用紙は、米崎町の産直はまなすにテントを設けて配布するほか、同連絡会のフェースブックページ(「陸前高田東日本大震災遺族連絡会」で検索)からもダウンロードできる。

 署名は全国から受け付ける。問い合わせは同連絡会(℡090・9633・5281)まで。