本年度は202㌧確保、26年産米精算金は高値実績に/たかたのゆめ
平成28年1月26日付 1面

陸前高田市がブランド米化を進め、東日本大震災の復旧水田を中心に作付けされている「たかたのゆめ」。市がまとめた本年度収量実績は、玄米で202㌧だった。前年比約8割にとどまったが、多くの水田で農薬や化学窒素肥料を抑えた栽培を進め、消費者の信頼向上などを図った。前年度収穫し、一昨年から昨年にかけて流通した平成26年産米の精算金は県内産米の中でトップの価格で推移し、地道に努力を重ねたブランド展開に一定の成果が出ている。
「たかたのゆめ」はもともと、日本たばこ産業㈱(JT)植物イノベーションセンター=静岡県磐田市=で開発され、10年以上保管されていた品種。同センター職員らが復興の一助となればと陸前高田に種もみを届け、25年度から本格生産が始まった。
市は本年度までの3年間、生産農家に苗1箱あたり600円の補助を行っている。復旧水田を中心に栽培が広がり、本年度は34個人・団体が生産を担い、市内のコメ作付面積の15%にあたる52㌶で作付け。復旧田は約40㌶を占める。
市などによると、成育状況が芳しくなかった水田を除き、9割超が農薬や化学窒素肥料を抑えた特別栽培米。26年産米は、特別栽培米と慣行米はほぼ同じ割合だった。
本年度収量は、前年よりも58㌧少ない202㌧。復旧田では地力低下の影響を受けたという。約9割を占める農協出荷のうち96%が1等米で、愛知県や関東圏に流通。本年度は自主流通もあり、地元産直施設でも取り扱われた。
本年度初めて設けた実証水田での栽培結果をみると、特別栽培は慣行栽培に比べ明らかな低収は見られなかった。品質評価値は、一般的に「おいしいお米」とされる数値を上回っている。
農協による本年度産米の概算金は1万円(60㌔、1等米)で「ひとめぼれ」などと同じ。冷めてもおいしく食べられるといった特性に加え、被災を乗り越えて生産されたドラマ性などが関心を呼んでおり〝プラスアルファ〟への期待が高まる。
26年産米の概算金は9000円。その後、全国的に見れば生産量が少なく、販売先も限定される中、比較的高値での取り引きとなった。先月に全農県本部から各農協に通知した精算金は、県内産(うるち米)の中でトップを誇った。
市は28年度、さらに生産面積を拡大させたい考え。安全・安心のイメージを保ちつつ、独自展開や消費者への理解浸透を進めるかがカギとなる。今後も生産者への支援を続けるが、より生産意欲や品質向上を後押しできる形にしようと検討を続ける。
一方で、復旧田の土管理など、被災地ならではの課題も待ち受ける。また、個人栽培や農事組合法人それぞれの実情にあった栽培手法確立の必要性も。今後も行政や農協、生産者、販路拡大を担う民間組織などが一体となった活動が求められる。
「たかたのゆめ」ブランド化研究会の佐藤信一会長(66)は「JTや伊藤忠グループをはじめさまざまな支援を受けて取り組んできた結果、成果が出つつある。今後は収量増加にも力を入れなくてはならない。復興米としてではなく、本当においしい米として受け入れられるよう頑張っていきたい」と、力を込める。