召しませ地元産サケ、森下水産が新商品開発/大船渡
平成28年1月28日付 7面

震災で被災した大船渡市の水産加工会社・森下水産㈱(森下幹生社長)は、復興庁の支援事業を活用し、サケとクリームチーズのスプレッド「モリーくんのふわっとろサーもん」を商品化した。これまで業務用の加工品製造を手がけてきた同社が、大船渡自慢の海の幸をPRすべく一般消費者向けに開発した新商品第1号。子どもの魚離れに歯止めがかかるよう工夫もこらしており、28日から気仙内外で販売していく。
パンなどの〝お供に〟
魚離れ歯止めへ味追求

好評の声が多くあがった試食会=大船渡町
26日に大船渡町にある同社の第三食品工場で発表会が行われ、関係者ら約20人が出席。森下社長は「この商品が家庭、地域と海を結ぶ懸け橋と育ってくれれば。会社としては復興への第一歩を踏み出すきっかけとしたい」とあいさつした。
このあと森下航生取締役本部長が開発までの経緯や商品の概要について説明。試食会も行われ、参加者が感想を述べ合った。
同社は商品開発に向けて被災地の新産業創出を支援する復興庁の「被災地域企業新事業ハンズオン支援事業」を活用。一般消費者向けのマーケティングから取り組み、盛岡市の料理研究家・小野寺恵さん監修のもと商品化にこぎ着けた。
スプレッドはパンやクラッカーにつけて味わうペースト状の食品。大船渡産のサケをメーン食材に据え、ほか原材料には北海道産のクリームチーズ、ハンガリー産のはちみつ、フランス産の塩のみを使用。サケのおいしさを楽しみながら、クリームチーズなどで癖のないまろやかな味に仕上げた。
「子どもにもっと魚を食べてほしい」という願いに加え、手軽に食べられるようこだわった。原材料が限られることから食材の配分で味が大きく変わり、試作も難航した。小野寺さんも「一般的なスプレッドはクリームチーズを食べる感覚だが、サケをメーンにしたものは珍しい。多くの人にお勧めしたい」と推奨する。
新商品は60㌘入りで、500円(税別)。大船渡市盛町のル・トレフルや盛岡市菜園のカワトクで販売される。
同社は23年1月に冷蔵施設を、同2月に第二工場を整備するなど生産拡大を図った直後、東日本大震災で盛町の本社をはじめ各施設が被災。いち早く復旧に取り組み、同年7月には一部生産を再開した。
昨年2月には第三食品工場が完成し、会社全体の生産能力と従業員数は震災前を上回った。売り上げも震災前並みに回復し、「復興」への新たなチャレンジとして新商品開発に踏み切った。
森下取締役本部長は「水産業にかかわるものとして『水産のまち大船渡』をPRできるものをつくりたかった。今後はサンマやホタテなどを使ってシリーズ化もできれば」と構想を語る。