「御詠歌の心」を学ぶ、ヘリテージマネ講座/大船渡

▲ 実演を交えながら御詠歌の解説を行った葛西師=シーパル大船渡

13日には住田で第3回

 

 気仙伝統文化活性化委員会(山口康文委員長)主催の平成27年度第2回「ヘリテージマネージャー養成講座」はこのほど、大船渡市のシーパル大船渡で開かれた。同市立根町の曹洞宗安養寺前住職・葛西修哉師が講演し、故人の供養などを目的に歌う「御詠歌」と仏教とのかかわりなどを解説。参加者らは御詠歌の心を学び、仏教を身近に感じる機会としていた。

 

講座は、文化庁による文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした地域活性化事業)を受けた「気仙の信仰習俗再発見による地域伝統文化活性化事業」の一環。文化財を生かすために協力し、その資料作成などができるヘリテージマネージャーの育成が目的で、この日は100人以上が参加した。

 講師の葛西師は駒澤大学大学院仏教学修士課程を修了後、大本山総持寺、奥州市の正法寺で修行。先代の後を受けて安養寺の住職となり、昭和60年から平成20年まで曹洞宗梅花流特派師範として全国各地で御詠歌を指導。現在は、曹洞宗主催検定会の検定委員を務めている。

 講演は「御詠歌の心」と題して展開。葛西師は各宗派で歌い継がれる御詠歌に関し、「どの時代に始まったかは不明であるが、第65代の花山天皇(平安時代中期)が西国三十三観音巡礼の際に歌われた和歌が元になった『巡礼歌』が各地に伝わり、御詠歌となったのではないか。曹洞宗の梅花流は、真言宗の大和流から密厳流の流れを汲んでいる」と解説した。

 自らと御詠歌とのかかわりでは「25歳で御詠歌を始めたが、御詠歌独特の節回しのため西洋音楽で説明できない部分が多く、以心伝心、教化別伝で習得していかなければならない。自身も10年から20年ぐらいで初めて、御詠歌の心が解りかけたような気がする」と語った。

 師匠である先代の住職と最愛の妻の死、東日本大震災の犠牲者を送る際の思いにも触れ、「亡き人にできることは、涙を流し、手を合わせ、お経をお唱えし、御詠歌でお送りすることだけではないか」と言及。「人生には、うれしいこと、悲しいことが数多くあるが、生きていればこそ体験できることを大切に。この一つとして、御詠歌も仏道修行として親しんでいただきたい」と呼びかけた。御詠歌の実演も交えられた講演を、参加者らは熱心に聞き入っていた。

 

13日のヘリテージマネージャー養成講座で講師を務める瀧本正德氏

13日のヘリテージマネージャー養成講座で講師を務める瀧本正德氏

第3回講座は13日(土)午後6時30分から、住田町役場で開かれる。世田米天照御祖神社宮司の瀧本正德氏が講師を務め、「今を生きる」と題して日々の暮らしの中の習慣、伝統について講演する。

 聴講は無料。問い合わせは同大学(℡47・4772)か東海新報社(℡27・1000)へ。