介護保険認定卒業第1号に、89歳吉田さんに証書交付/陸前高田市

▲ 証書を受け取り、元気な笑顔を見せる吉田さん=陸前高田

前向きな生活で回復

 

 陸前高田市は5日、気仙町古谷の吉田アイ子さん(89)に介護保険認定の〝卒業〟をたたえる証書を交付した。吉田さんは昨年、骨折を機に「要介護4」の認定を受けた。その後通所したデイサービスで利用者らのお世話役を果たすなどしながら、前向きな生活を続けて骨折前の元気が復活。証書授与は市内第1号で、市関係者は〝卒業意識〟の普及に期待を込めた。

 証書授与は吉田さん宅で行われ、戸羽太市長が訪問。市長が証書を手渡すと、吉田さんは恥ずかしそうな表情を浮かべた。それでも、すぐに「みんなでお茶っこのむべし」と語り、積極的に市関係者をもてなすなど元気な振る舞いを見せた。

 大正15年生まれ。昨年3月に畑から自宅に戻る際に転倒して右腕を骨折したのが、介護認定を受けるきっかけとなった。

 当時は、肩から手首までギプスを着用。自宅内のベッドで多くの時間を過ごす日々が続いた。入浴を希望し、一緒に暮らす息子たちに負担がかかることから、介護認定申請に至った。

 4月にケアマネージャーが初めて訪問した際は、弱気な言葉が多かったという。その後、通院先などで「治りが早い」などと励ましの言葉を受け、5月からデイサービスの利用が始まった。

 以降、週1回のペースで通所。入浴が主な目的で、特別なリハビリを行うことはなかったという。

 施設では「口は痛くないから」と、ほかの利用者との会話を楽しみ、世話役を買って出た。市社協主催の「お茶っこ飲み会」にも参加し、お手製の漬物を持ち寄るなど積極的な行動を続けてきた。

 元来、前向きな性格。「よその人がデイサービスを利用できるようになってほしい。一人で着替えもできるようになったから」と、自立を選択。認定期間満了を迎えた昨年10月末、すっかり元気になったため継続申請せず〝卒業〟を迎えた。

 吉田さんは「震災の時も、捜索に来た警察官たち20人くらいとお茶のみ話をした。誰かが来たら話をしたり、おもてなしするのが好き。これが健康の秘訣」と話す。今も炊事や洗濯を担い、デマンド交通を利用するなど、外出も頻繁に行う。

 市による卒業証書授与は、高齢化に伴う要介護者の増加や介護費用増大に対する取り組みとして本年度から始まり、第1号の認定。市では今後も、対象者やその家族らに対する啓発や意識醸成を図ることにしている。