出荷可能生産者10人に、原木シイタケ制限一部解除/気仙

▲ 環境改善を進め、生産再開に至ったほだ場=矢作町

 東日本大震災直後の原発事故に伴う放射性物質の影響で、出荷制限対象となっている原木シイタケ。先月25日付で大船渡市と陸前高田市の生産者4人の出荷制限が一部解除となり、気仙3市町で出荷可能な生産者は計10人となった。
 東京電力㈱福島第一原子力発電所事故による放射性物質汚染被害を受け、平成24年に気仙管内の原木生シイタケ生産者29人、乾燥生産者81人に対し全戸検査を実施。一般食品の放射性物質濃度基準値を超える結果が含まれ、同年4月に気仙3市町に対して出荷制限指示が出された。
 以降、再開を目指す生産者は、放射性物質を低減させる県が取りまとめた栽培管理手法のチェックシートに基づき準備。昨年までに大船渡市は4人、陸前高田市1人、住田町1人の出荷制限指示が一部解除されている。
 今年に入って出荷可能となったのは、陸前高田市が3人、大船渡市が1人。1月25日以降に収穫したものが出荷でき、植菌したほだ木を置く場所ごとに出荷前検査を行う。
 解除となったうち、陸前高田市矢作町の佐々木正吾さん(75)は現在、矢作地区コミュニティセンターそばのスギ林で約1000本のほだ木を並べている。シイタケは震災前からすべて乾燥品としており、4月からの収穫、今秋以降の出荷を見据える。
 25年前に趣味として生産を始め、15年前から出荷。7500本にまで増やし、1万本到達も視野に入った中で東日本大震災が襲った。
 再開に向け、2年前にスギ林内の表土を取ったあと、麻生地のシートを敷くといった対策を講じた。震災前は原木は市内で確保していたが、影響を受けていない県北から調達。植菌作業でも、なるべく原木が土などに付着しないよう注意したほか、落ち葉からの影響を防ぐネットで覆っている。
 これまで出荷していた市森林組合や県などからの励ましを受けながら、地道な準備を重ねた。原木栽培は香りや食感にすぐれ、流通再開を心待ちにしている消費者は多い。
 「5年間のブランクは大きい」と佐々木さん。それでも、ほだ木から早くも出始めたシイタケを見つめ「まだ実感はわかないが、安堵している。まずは2500本まで戻し、そこからは体の調子と相談しながら決めていきたい」と話し、笑顔を見せる。