製鉄体験さらに発展、抽出した鉄が農具に/有住小学校(別写真あり)

▲ 製鉄体験で抽出した鉄が2本の農具に加工され、子どもたちのもとに=有住小

刀匠の手で2種類の鍬に

 

 住田町立有住小学校(都澤宏典校長)による「たたら製鉄体験」で抽出した鉄がこのほど、2本の農具になった。5年生17人、6年生20人がそれぞれ体験で取り出した鉄を用い、鍛冶体験の講師を務めた宮古市の刀匠が2種類の鍬に加工。体験で生まれた鉄を道具として加工したのは、たたら製鉄体験が始まって以来初めて。児童らは生まれ変わった自分たちの鉄の姿に、驚きと喜びを見せた。

 

5、6年生が参加

 

たたら製鉄体験に取り組む5年生たち=民俗資料館(昨年11月)

たたら製鉄体験に取り組む5年生たち=民俗資料館(昨年11月)

 同校によるたたら製鉄の体験学習は平成23年度、地元の有住たたら研究会の呼びかけで初めて実施。24年度以降は、町教育委員会が5年生に住田の森林や製鉄の歴史などを学んでもらおうと、総合的な学習のカリキュラム「住田の森林のおくりもの~栗木鉄山物語~」として毎年取り組んでいる。

 カリキュラム化されてからは、体験はもちろん、町が誇る豊富な森林と製鉄とのかかわり、人々の生活になくてはならない鉄の存在を学び、世田米の栗木鉄山跡見学、テレビ番組用の取材なども展開。25年度からは刀匠の辻和宏氏を講師に、抽出した鉄を使った鍛冶作業も体験している。

 27年度は昨年9月下旬から学習を始め、1113日には耐火レンガで組んだたたら炉を熱して磁鉄鉱と木炭を投入し、鉄の部分となる鉧(けら)を約5㌔抽出。同16日には、鉧と現在の6年生が前年に取り出した7㌔余りの鉄で鍛冶体験を行い、鉄を延べ棒状にする作業に取り組んだ。

 鍛冶体験後、子どもたちの鉄は辻氏が預かり、5年生の鉄は平鍬に、6年生のものは4本の刃がある備中鍬に加工。完成品は今月初めに町教委に届き、その後、子どもたちにも披露された。

 体験でできた鉄が新たな形に生まれ変わり、児童らはビックリ。出来上がった鍬を手に取った児童は「結構重い」と話しながらも、土を耕すポーズをとるなどして完成を喜んだ。

 5年生の小山はるかさんは「自分たちが作った鉄の延べ棒がこのような農具になって、職人たちの加工はすごいと思った。実際に使ってみたい」と感心した様子。6年生の齊藤愛貴(まなと)君は「時間をかけて自分たちで鉄にしたものが、こういう形になった。後輩たちには出来上がった農具を大事にして、製鉄体験をした自分たちや辻さんのことも引き継いでほしい」と願いを込めた。

 農具は今後、町教委で保管し、28年度以降は同校の学級農園作業で利用する計画。教委では今後もたたら製鉄から鍛冶体験、そして道具への加工までを児童らが学べるカリキュラム形成に取り組んでいく。