環境整備計画案示す、29年度から事業導入予定/気仙川

▲ 県による世田米地区の河川環境整備計画案

 県はこのほど、住田町世田米地区の気仙川における河川環境整備計画案を作成した。計画延長は下流側の瀬音橋から上流側の美土里橋付近までの約2㌔で、遊歩道や昭和橋付近への多目的広場設置など、自然環境、世田米ならではの景観と一体になった整備を検討している。すでに機会を捉えて一部町民から意見聴取を行っているが、平成28年度には地域住民向けの説明会を計画。事業導入は29年度からを予定し、世代を超えた人々が憩える環境整備を目指す。

 

28年度に意見聴取、河川改修工事も進む

 

 住田町と陸前高田市を流れる気仙川。上流の大股川と合わせ、県は長年にわたって津付ダムの整備による治水対策を進めてきた。しかし、平成23年の東日本大震災を受け、被災した下流域の復旧、復興に向けたまちづくりへの取り組みに合わせて計画を見直し。26年にダム事業を正式に中止し、河川改修事業による整備に変更した。

 河川改修事業を進めるに当たり、県は26、27の各年度に流域の地域住民らを対象にした意見交換会を開催。事業の概要を示すとともに、住民から必要な整備や環境保全などの要望を受けていた。

 今回作成した河川環境整備計画案は、治水対策を目的とした河川改修事業とは異なるもの。町や住民、専門家からの意見を踏まえたうえで、流域の環境、景観、川を活用したイベントなどを考慮し、川を訪れる人々の憩いの場形成を目的とする。

 現時点での環境整備延長は、瀬音橋上流側から美土里橋下流付近までの約2㌔。上流から見て右岸側には、河川管理用通路を散策路か車道として活用する。

 このうち、昭和橋からすみた荘付近までの川沿い約1・3㌔には、幅員2~4㍍の遊歩道を整備。昭和橋から清水橋に至る区間には、桜並木の保存と整備を行い、利活用を考えながら各所への階段設置も図る。

 昭和橋の上流側に位置し、夏まつりなどの催しで利用されている広場は、面積約3000平方㍍の多目的広場として整備し、低水護岸の設置も検討。対岸の左岸側は、背後に広がる蔵並みといった世田米独特の景観に合うよう、川岸の舗装やフェンスの交換などを計画する。

 ふれあい公園付近の川岸には、緩やかな傾斜堤を構築。世田米小学校裏付近は児童らの水質調査といった環境教育の場に活用できるよう、階段護岸の設置を検討する。清水橋付近はサイカチ広場として、憩いの場を形成する。

 護岸ブロックには、維持管理や植栽、魚類の生息、景観に配慮したものを検討中。遊歩道に敷く木質チップや低水護岸用の木枠には、町産材の活用を見込む。

 これらはあくまでたたき台であり、県は28年度に住民向けの説明会などを開き、昭和橋の架け替え事業と合わせて幅広い世代からの意見、要望を聞きながら成案化する考え。事業導入は29年度を予定し、段階的な整備を進めていく。住田整備事務所の高橋正博所長は「人々が集まる場所にするとともに、地域資源や河川整備とのマッチングも図っていきたい」と話している。

 また、気仙川と大股川の河川改修事業は、大股川1カ所、気仙川5カ所(住田町内2カ所、陸前高田市内3カ所)での河道掘削作業が2月中に終了。同町世田米の川向工区(整備延長・左岸約1・0㌔、右岸約1・6㌔)では、28年度からすみた荘前の護岸工事に着手する計画となっている。