復興への道 見守って、大船渡で県と合同の追悼式(動画あり)
平成28年3月12日付 1面

東日本大震災から5年を迎えた11日、気仙各地で追悼行事が行われた。大船渡市のリアスホールでは県と市の合同追悼式が行われ、約730人が参列。犠牲となった人々を悼みながら「あの日」からの道筋を振り返り、道半ばの郷土復興へ今後も力を合わせていくことを誓い合った。
遺族らが花手向ける
同市では340人が津波の犠牲となり、79人の行方がいまなお不明のまま。震災関連死は79人となっている。被災世帯は5534を数え、この5年の間に高台での再建などが進んだ一方、応急仮設住宅には1800人近くが入居し、不自由な暮らしを余儀なくされている。
大きな悲しみをもたらした津波の襲来から5年となった同日は、朝から青空が広がった。式は午後2時30分から大ホールで開かれ、来賓や遺族らが出席した。
ステージには「東日本大震災犠牲者之霊」の標柱を菊花で囲んだ祭壇が設けられ、その隣の大型スクリーンで政府追悼式の様子を放映。同46分に1分間の黙とうをささげ、安倍晋三首相の式辞や、天皇陛下のお言葉に耳を傾けた。
式に移り、達増拓也知事は「すべての県民が心を一つにして復興を成し遂げ、『いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造』を実現することを誓う」、戸田公明市長は「惨禍の記憶が決して忘れられぬよう、未来を生きる世代に語り継ぎ、災害に強い強靱なまちづくりに全力を尽くす」と、犠牲者を悼みながら復興への決意も新たにした。高木宏壽復興大臣政務官、田村誠県議会議長、畑中孝博市議会議長も力を合わせ前進することを誓った。
東京都出身の北里大海洋生命科学部2年生で、同市三陸町越喜来に暮らし津波で行方不明となった瀬尾佳苗さん=当時20=の父で、会社役員の真治さん(61)=練馬区=も祭壇の前に立った。
佳苗さんを探して毎月越喜来に足を運ぶうちに生まれていった地元の人たちとの交流に触れ、「きずなを大切に、佳苗の分までしっかり前を向いて生きていこうと思う。わたしたち家族は大震災を風化させないために語っていくことが与えられた使命だと思っている」と語った。
このあと、赤崎、蛸ノ浦両小学校の6年生26人が献歌。赤崎小校舎が津波で全壊して以降、蛸ノ浦校舎でともに学んできた児童たち。吉田琴美さん(赤崎)が「わたしたちの故郷がもう一度美しい笑顔にあふれた花を咲かせるために、新しい未来に向かって一歩一歩力強く歩んでいきたい」と述べ、「旅立ちの日に」「花は咲く」に声を合わせた。
参列者は一人ずつ祭壇に歩み寄って献花した。
式典終了後も市民らが訪れ、旅立っていった家族や友人たちをしのびながら白菊を手向けていた。