〝3町のシンボル〟着々と、卒業生が新校舎の現場見学/高田東中(動画、別写真あり)

▲ 現在は鉄筋コンクリート部分の整備が進む現場=陸前高田

 陸前高田市立高田東中学校(吉田雄幸校長、生徒197人)の新築工事は、平成28年度3学期からの利用開始に向け、鉄筋コンクリート部分の建造などが進められている。気仙大工の技術をほうふつとさせる反り上がった屋根が特徴の一つで、4月からは校舎部分で3900本にも及ぶ気仙杉を材料とした梁の設置に入る。15日には、卒業式を終えたばかりの同校3年生らが見学に訪れ、統合によって生まれた〝3町のシンボル〟に期待を込めた。

 

気仙杉の梁3900本

来月にも着手、来年3学期から利用へ

 

 高田東中は広田、小友、米崎各中学校の統合により、25年4月に開校。東日本大震災では広田、小友の両学校施設が全壊し、現在は旧米崎中校舎を利用している。

 見学会には、開校当時1年生で12日に卒業式を終えた3年生とその保護者ら約80人が参加。生徒たちはこれまでも、新校舎建築に対する設備の希望やアイデアなどを寄せてきた。

 新校舎は米崎町と小友町境に位置するアップルロード沿いの造成地に、広田湾方向に下る地形を生かして建築が進められている。生徒たちはグラウンド予定地を歩いたり、槌音が響き渡る校舎整備を間近で見学しながら、現場の今に理解を深めた。

 内装に入る前の壁には、生徒たちが名前を記入。見守った吉田校長(59)は「この子たちが、がんばって高田東中の校風をつくった。卒業しても、3町から集まって生まれたこの校舎を〝地元の学校〟であると思い続けてほしい」と語った。

現校舎では模型による説明も=同

現校舎では模型による説明も=同

 現校舎では200分の1の模型を囲み、35社による提案の中から設計業者に選ばれたSALHAUS社(東京都)関係者から説明を受けた。体育館、屋内運動場とも大屋根が特徴で、気仙の伝統建築でみられる反り上がった形状となっている。

 校舎と屋内運動場の構造は、鉄筋コンクリート造一部木造及び鉄骨造2階建て。このうち、校舎部分の梁には、気仙杉を約3900本使用する予定。材料寸法は幅18㌢、高さ6㌢、長さ4㍍で、2段積みとして活用する。

 説明後、生徒たちは次々と手を上げ、内部機能を質問。屋内運動場に暖房はないものの、暖かい空気が上部にたまる性質を生かし、天井部にダクトを設置して下部に送り込む機能を設けるという。停電時、断水時を想定した設備もあり、生徒たちは安全確保につながる活用への意識も高めた。

 見学を終えた3年生の菊池亜美さん(15)は「みんなの願いが詰まっていて、防災や日常の活動にも使える校舎。完成したら、入ってみたい」と語り、笑顔を見せた。

 新高田東中学校の敷地面積は3万4693平方㍍、校舎面積は4493平方㍍。屋外運動場が1万964平方㍍で、テニスコートも確保する。工事は佐武建設・菱和建設経常建設共同企業体が請け負い、30億6800万円で契約を結んでいる。

 今年10月末の完成、3学期からの本格利用を見込む。震災時の避難所や、地域住民の各種活動にも対応した構造とする。