津付ダムの〝記憶〟石碑に、地権者・関係者で除幕式/住田町(別写真あり)
平成28年3月25日付 7面
落合大橋のたもとに
住田町世田米を通る一般国道397号・津付道路の落合大橋たもとに「津付ダム記憶碑」が建立され、24日に県主催の除幕式が挙行された。碑は平成26年7月に中止となった県営津付ダム建設事業に対し、その計画があった記憶を後世に残してほしいという地権者らの願いを受け、建設計画の歩みとともに設置したもの。式には地権者をはじめ、町や県の関係者らが出席し、ダム計画の〝語り部〟となる石碑の完成を喜ぶとともに、事業に携わった人々の思いを次世代につないでいこうと誓い合った。
休みどころも開設
津付ダム建設事業は、同町と陸前高田市を流れる気仙川、大股川の洪水対策として昭和52年、県が調査に着手。整備に向けた取り組みを進めてきたが、平成23年の東日本大震災発生を受けて県は被災した気仙川下流域の復旧、復興に向けた新しいまちづくりへの取り組みに合わせて河川の治水計画を見直し、26年に事業を中止した。
記憶碑はこの中止に伴い、地権者らから「この地に津付ダム事業があったという証を何か残してほしい」との希望を受けて建立。地権者代表や町とも検討を進め、実現に至った。
式には、地権者らをはじめ、多田欣一町長や菊池孝町議会議長、県沿岸広域振興局の菊地一彦副局長、同住田整備事務所の高橋正博所長ら13人が出席。菊地副局長はダム事業の歩みを振り返り、「気仙川流域の洪水対策のため、先祖伝来の住み慣れた貴重な土地の提供を決断いただいた地権者の皆さま、多大なる尽力をいただいた地域、町職員の皆さまに心から感謝したい」とあいさつした。
多田町長は「感謝がこもった碑であり、地権者が生活していた記憶にもなる碑」と建立に感謝し、ダム建設に代わる河川改修事業が着実に進むよう祈念。「この場所を素晴らしい景色、景観を見てもらえる場に造られたことも、温かい配慮の一つ」と語った。
昨年解散した地権者会代表の佐藤太一さんは「ダムになる予定が幻に終わったのは残念だが、この碑を心のよりどころとしてこの山里に帰ってきたい。これからも災害を防げる河川改修をお願いしたい」と述べた。そして出席者全員で除幕し、ダム事業計画の存在を伝える記憶碑の完成を喜び合った。
記憶碑にはダムの建設場所だった大股川流域の石を使っており、大きさは縦1・15㍍、横2・45㍍。黒御影石製のプレート部分には、多田町長が揮ごうした「記憶」などの文字が彫られている。
碑の左手には「津付ダム建設計画から中止までの歩み」を、右手には「津付道路の概要」を記した案内板も配置。歩みには、38年にわたる事業の中でおもな動きを記した。津付道路の概要にも、地権者や関係者の協力に感謝する一文が添えられている。
記憶碑の建立に合わせ、県はその周辺を休みどころ(面積は200平方㍍)として整備。6台分の駐車場とベンチ2台が設けられ、ダム計画があった場所や四季折々の山の風景を眺めることができる。
式後は、菊地副局長、高橋所長らが建設予定地だった場所に移動。平成10年に設置された「津付ダム建設事業」の看板(高さ2㍍、幅0・5㍍)を撤去するセレモニーも行った。