再建の動き着々と、土地区画整理事業・高田地区の高台②/陸前高田市

▲ 完成した住宅内で笑みを浮かべる敏雄さんと妻の和美さん=高田町
各地で建築工事が進む高台②=同

各地で建築工事が進む高台②=同

 陸前高田市による高田地区被災市街地復興土地区画整理事業のうち、唯一造成が完了した高台②(高田一中北側)では、住宅建築工事が盛んに進められている。同校に近い南工区では完成を迎えた住宅もあり、再建者は待望の「我が家」で笑みを浮かべる。一方で、同事業では平成30年度まで造成が行われる区域もあり、再建に向けた被災者の前向きな希望をしぼませない支援体制の重要性が増している。

 

完成迎えた住宅も、槌音響き景観日々変化

 

 「これからはのびのびと寝られるし、家のそばまで車を入れられる。やはり、自分の土地に家を建てたかったから」。

 高台②に完成した住宅内で2日、施主である村上敏雄さん(73)は安堵の表情を浮かべた。施工した積水ハウス㈱大船渡事務所による完成見学会が同日から始まり、午前から多くの住民が訪れた。

 村上さんの自宅は震災前、森の前地域にあった。築30年ほどの住宅を、区画整理事業に伴い60㍍ほど曳屋工事で移動させたのに合わせ、リフォームを行ったのが平成22年。その1年後に被災した。

 高田一中体育館での避難所生活を経て、23年夏から同校グラウンドの仮設住宅に入居。造成工事の行方を眺めながら、再建への思いを膨らませる日が続いた。

 昨年夏、高台②への換地が確定し、建築工事は今年1月から本格化。85坪ほどの敷地に24坪の軽量鉄骨造平屋の住宅が完成し、今月中に引っ越す計画。1日は市役所に出向き、住所変更手続きを済ませた。

 再建に向けた最も大きな不安は、資金面だった。「年齢もあり、ローンを組むことができない。自分たちで出せる分と、支援金の範囲で自分の家を何とか持つことができた。チラシを見ていても、税込みだった値段が税抜きになるとか、住宅価格は実質的にどんどん上がっていった。5年は、やはり長かった」と振り返る。

 かつて〝ご近所さん〟だった住民は、村上さん宅の近隣で再建を計画している。「みんな顔見知りなのでホッとする」と、コミュニティー再生に期待を寄せる。

 高台の切土造成や浸水域でのかさ上げにより、住宅再建や商工業振興、にぎわい再生を図る被災市街地復興土地区画整理事業。高田、今泉両地区を合わせた整備面積は約300㌶と、被災地の中でも際立つ大規模事業が展開されている。

 24年度の事業認可以降、まずは被災者が暮らす高台住宅地を確保しようと、市は先行地区での早期事業化を進めてきた。その一部である高台②は25年3月から伐開・伐木工事に着手。最高部で標高が約60㍍の丘陵部を、高田一中グラウンドと同じ高さに掘削した。

 防災集団移転促進事業による移転者を含め、約90地権者分の宅地を確保。このうち、同校に近い南工区では昨年11月に地権者への引き渡しが行われ、12月から建築可能に。市庁舎に近い北工区は、南工区よりも約1カ月遅れた形での手続きとなり、今年1月から住宅建築が可能となった。

 高台②では現在20軒ほどで住宅建築が進み、槌音が響き渡る。今年に入り、景観は大きく変わった。再建後はコミュニティーづくりをはじめ、ソフト面での支援が重要性を増す。

 半面、高田、今泉両地区では30年度まで造成完了を待たなければならない区域もある。仮設住宅の集約化計画もまとまり、焦りや寂寥感を募らせる被災者も少なくない。多様化する被災者の不安解消に向け、きめ細やかな支援体制が求められる。