10年余りの成果一冊に、『ふるさとの古文書』発刊/住田町

▲ 住田古文書の会がこれまで判読した資料をまとめた『ふるさとの古文書』を発刊

 住田町の古文書愛好者らで構成する「住田古文書の会」(佐々木康雄会長、会員7人)はこのほど、冊子『ふるさとの古文書』を発刊した。メンバーらが10年余りにわたり、町内の家々に保管されていた古文書資料を解読する作業を続け、その成果を初めて一冊にまとめた。メンバーらは発刊を喜ぶとともに、各資料の提供者やアドバイスを送ってくれた関係者らにも感謝。「2冊目、3冊目と出していきたい」と、今後の活動に意欲を見せている。

 

愛好者らが判読

 

 同町では平成14年から4年間、町教育委員会が古文書講座を開設。町民らが受講し、古文書解読の知識や技術を学んできた。講座修了後も受講生らは〝判読会〟として学習を継続。10年近くコツコツと解読作業を続けてきたのち、昨年3月に住田古文書の会を発足した。

 同会は、町が住民活動を支援する制度「みんなでできる町づくり事業補助金」を利用。補助を受け、古文書史料の発掘と解読・整理・保存研究を図る「住みたいまちにできる『温故知新』」事業を進めた。

 『ふるさとの古文書』は、活動の一つである「古文書の〝解読版〟編集と発刊」に当たるもの。講座や判読会で取り組んできた解読のうち、42の資料について原文と判読文を一緒に掲載した。判読、出版に当たっては、陸前高田古文書の会や江刺市古文書の会などの指導、協力を得た。

 このうち、仙台藩主第五代獅山伊達吉村公が享保8(1723)年に領内を巡見した様子を記した「気仙境目並浜方巡見記」、幕府の法令に準じて農民が日常守るべき心得として正徳4(1714)年に出されたものの写し「御百姓身持御条目」は講座で学んだもの。メンバーらが古文書解読に取り組む出発点となった。

 そのほかは、町内の旧家から協力を得て集めた古文書が多い。鉄砲を所持する場合の詳細な決まりを記した文政4(1811)年の「世田米村鉄砲御改」をはじめ、江戸見物に出かけた際に発行されたという「往来証文」、土地の売却などに関する証文といった、当時の社会や人々の暮らしが垣間見える貴重な資料と判読文が載っている。

 佐々木会長は「発刊にあたって」の中で、「会員同士での解読会は、なかなか思うにまかせず、結論を得るまでに相当の時間を要しましたが、此の事によって、理解も深まり、各自の力量を高める事に連動しているものと実感している次第」などと記載。関係者らの支援と協力に深く感謝している。

 高木辰夫副会長(87)は「これまでの取り組みをせっかくだからと一冊にまとめた。それぞれのレベルアップ、後継者育成も必要であり、今後も勉強を重ねたい。まだ解読したものが残っているので、次回の本につなげていきたい」と意気込む。

 冊子はA4判モノクロで、202㌻。200部作成し、資料の提供者や気仙各地の関係機関などに配布した。冊子に関する問い合わせは、高木副会長(℡48・2596)へ。