避難充実へ厳しい声も、津波伝承施設基本計画案説明会/陸前高田(別写真あり)

▲ 伝承施設整備の方向性が示された説明会=陸前高田

 陸前高田市・高田松原地区に設けられる震災津波伝承施設の展示などに関する基本計画案についての説明会は14日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。住民からの発言では、施設そのものよりも避難路充実を強調する意見が目立った。6月中の成案化を目指し、意見は5月9日(月)まで受け付ける。

 施設は国や県、市が共同整備を計画。現在の国道45号と同340号が接続する交差点近くに、地域振興施設や道の駅などと一体的に設ける方向で現在調整が進む。津波復興祈念公園は平成32年度の完成を目指し、今後整備が本格化する。

 説明会は県が主催し、同日は昼と夜の2回に分けて開催。このうち昼の部には住民や気仙両市の職員ら約30人が出席し、県復興局まちづくり再生課の田村荘弥総括課長は「事実と教訓を次の世代に伝え、世界に復興の姿を伝えていく場所として高田松原に整備する計画で進めている」とあいさつした。

 説明によると、整備方針には▽東日本大震災津波の事実と教訓の世界、そして未来への伝承▽復興に立ち上がる姿と感謝の発信▽三陸沿岸地域へのゲートウェイ機能を有する施設として整備▽屋外の震災遺構などを震災被害の実物展示として活用──を掲げる。

 展示を通じて問いかけるテーマは「いのちを守り、海と大地と共に生きる~二度と東日本大震災津波の悲しみを繰り返さないために~」とした。震災から命を守るために主体性を持って学ぶきっかけを提供する場などを描く。

 展示構成のうち「導入展示」では、震災前の姿や暮らしの風景を紹介。「事実を知る」では大津波の全体像や被害を伝える。「教訓を学ぶ」では救助、復旧の全体像などをまとめる。

 「復興をともに進める」では、安全なまちづくりやなりわいの再生、コミュニティー再生の歩みなどをテーマとする。「地域と交流する」は、陸前高田の市街地や三陸沿岸各地域に誘導するための情報発信を見据える。

 案では現時点で考えられる展示の具体例として、床面での衛星写真展示、360度の視野角を持つ特殊カメラで撮影した映像による「キューブシアター」、被災者の経験にふれることができる「証言テーブル」などを紹介している。

 出席者の一人は、先月開催された復興祈念公園有識者会議の場で示された公園基本設計検討にふれ「住民ワークショップでの意見が反映されていない」と指摘。避難路充実の徹底などを強調したほか「15㍍近くの津波が来ている場所に人が集まることについてはどう考えるのか」と、県側に迫った。

 田村総括課長は避難路計画も立てている実情に理解を求めたほか「被災低地部は各地域でそれぞれ工夫しながら活用を考えている。高田松原では世界に発信していく利用も重要になる」と語った。別の出席者からも、分かりやすい避難路整備を求める声が出た。

 案に関する意見は、郵送かファクス、電子メールで受け付ける。様式は自由だが、必ず住所と名前を記入すること。

 郵送先は〒020・8570(住所記入不要)県復興局まちづくり再生課。ファクス番号は019・629・6944。

 電子メールのアドレスはAJ0003@pref.iwate.jp。