募金、物資、職員派遣…思い重ね「少しでも支えに」、気仙でも支援広がる/熊本地震(別写真あり)

▲ 清和会会員らの善意が込められた義援金を寄託=立根町

 熊本、大分を中心に相次ぐ大地震被害を受け、気仙でも支援の動きが本格化した。余震におびえながら避難所で過ごした不安の日々、見ず知らずの人々から寄せられた心温まる支援──。東日本大震災からの復旧・復興に追われながらも、5年前の経験をふまえ、それぞれが思いを寄せる。現地で活動する組織との連携確保や、ニーズ把握を進める動きもあり、支援の輪はさらなる広がりが見込まれる。

 

■行政・社協

 大船渡市に事務局を置く日本赤十字社県支部大船渡市地区(地区長・戸田公明市長)は、市内48カ所に熊本地震災害義援金の募金箱を設置。市役所をはじめ公共施設8カ所と、市内事業所・商店など40カ所にあり、6月24日(金)までとしている。

 同市社会福祉協議会は20日、立根町の市Y・Sセンター内に赤い羽根共同募金の募金箱を置き、善意の受け付けを始めた。「東日本大震災の際、熊本にもいろいろとお世話になった。隅々まで行き渡るような募金額を集めて熊本に届けられたら」と願いを込める。

 また、表千家大船渡清和会の佐藤博子会長らは同日、市社協に義援金を寄託した。熊本地震被災地への義援金が市社協に寄託されたのは今回が初という。

 清和会は春の茶会を17日に開催。佐藤会長の発案で募金箱を置き、1日で3万1171円が寄せられた。佐藤会長は「皆さんが賛同してくれてうれしかった。被災している人が多いから、快く寄付してくださったように思う」と話した。

 東日本大震災以降、全国各地から支援を受け続ける陸前高田市。22日には熊本県宇土市と益城町に向け、現地で不足気味の物資を積んだトラックが出発する。職員3人も現地に向かう。

 宇土市は5階建て構造の市庁舎で4階部分が押しつぶされるなど、20日現在で通常業務はすべて中止。同市の元松茂樹市長は、49歳までに当選した市長で構成する全国青年市長会に所属している。

 5年前は陸前高田市の戸羽太市長も所属し、同会から職員派遣など手厚い支援を受けた。宇土市と益城町からは、奇跡の一本松保存事業への寄付も受けたという。

 陸前高田市は宇土市と連絡を取り、水や食品、食器、トイレットペーパー、ごみ袋を確保。物資を積んだトラックと防災局、総務部の職員計3人は、22日午前10時に消防防災センターを出発する。

 同市社協では全国社協から「現状では現地社協の対応が困難。東北・北海道ブロックは待機を」との通達を受けており、「県社協から要請があり次第動く」とする。

 社協内に事務局を置く市共同募金委員会は、熊本県共同募金会へ送金するための義援金受け付けを開始。募集期間は6月30日(木)まで。高田町字鳴石の社協施設が受付窓口となる。問い合わせは社協(℡54・5151)へ。救援物資の取り扱いはしていない。

 住田町では現在、県共同募金会住田町共同募金委員会(委員長・多田欣一町長)が中央共同募金会で募集している義援金を受け入れ中。町社協事務局で随時受け付けを行っている。今後は町内の数カ所に募金箱を設置し、町民らに広く協力を呼びかける。

 

■福祉・介護

 社会福祉法人典人会(柏貴美理事長)の災害介護派遣チーム「DCAT(ディーキャット)」は19日から、熊本県南阿蘇村で介護支援活動を展開。医療法人勝久会(木川田典彌理事長)も23日(土)から職員を被災地に派遣し、介護者の人手不足解消につなげる。

 DCATは、東日本大震災で介護者不足が課題になった教訓から創設され、災害時に介護支援で即戦力となるスタッフが登録。公益社団法人日本認知症グループ協会からの支援要請を受け、介護福祉士や介護支援専門士ら4人が現地に向かった。

 典人会によると、高齢者の見守りといった介護活動や支援物資の仕分けなど、現地職員のフォローに尽力。大船渡へ戻る24日(日)まで活動を続ける。

 勝久会は職員の介護士や介護福祉士ら延べ8人を2陣(23~28日、27~5月2日)に分け、グループホームやデイサービスセンターなどに派遣する。介護老人保健施設・気仙苑の今野千賀子看護部長(56)は第2陣で被災地に入る。「介護者や介護が必要と判断できる専門職の人が不足している状態と連絡を受けている。東日本大震災の経験も生かして活動にあたる」と決意を寄せる。

 大船渡市赤崎町に作業所を構え、障がい者らの就労を支える非営利型一般社団法人かたつむりでも支援活動を始めた。

 東日本大震災以降、気仙来訪を続ける宮崎県のシンガーソングライター・きりんさんが被災地に入り、炊き出しや必要な物品の聞き取り調査を進めているという。把握したニーズに迅速に対応できるよう、作業場ではスタッフらが物資整理を進める。

 難民を助ける会や救世軍、ゆめ風基金、自閉症協会などとも連携。支援品の提供に向け調整を続ける。スタッフらは「多くの支援によって少しずつ復興の道を歩んでいる私たちだからこそ、行動を起こさなければ」と語り、作業に力を込める。

 

■募金呼びかけ

 大船渡市のNPO法人夢ネット大船渡(岩城恭治理事長)は15日から、同市盛町の三陸鉄道盛駅ふれあい待合室で募金活動を展開。5月中旬までを予定している。

 岩城理事長は「東日本大震災でお世話になった恩返しでもある。九州全体にとって少しでも役に立てられるよう、皆さんからの善意をよろしくお願いします」と呼びかける。

 三陸鉄道㈱も釜石、宮古などの各駅に募金箱を設置しており、「三陸鉄道を応援していただいている多くの皆さまと共に、広く募金を呼びかける」とメッセージを添える。

 陸前高田市米崎町のNPO法人・再生の里ヤルキタウン(熊谷耕太郎理事長)は、23日(土)午後4時から同町のイオンスーパーセンター陸前高田店でコンサートを行い、義援金を募る。

 支援の輪を広げ、東日本大震災支援への恩返しをしようと企画。当日は学生ボランティア団体と福島県のバンド「IN THE WIND」が協力する。

 会場に募金箱を設置し、同バンドが演奏を披露。熊谷理事長は「すぐに駆け付けられる状況ではないが、支援の気持ちを広げて、募金はきっちりと行政や赤十字に届けたい」と話す。