支援の動きが本格化、熊本地震の被災地に向け/気仙(別写真あり)
平成28年4月23日付 7面

最大震度7を観測した本震後も活発な活動が続く熊本地震。被害が集中している熊本、大分両県では、震災発生から1週間余りが経過した今も、約9万人が不自由な避難生活を送っている。こうした中、東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙では、各地で義援金の募金活動がスタート。長期化する避難生活で必要とされる物資の搬送や介護職員の派遣など、震災体験を生かした被災地支援の動きも本格化している。
介護支援で職員8人派遣/勝久会
大船渡市の医療法人・勝久会(木川田典彌理事長)は23日から、熊本地震にかかる被災地支援で、介護職員ら8人を熊本県の介護施設などに派遣する。22日には同市大船渡町の介護老人保健施設・気仙苑前で壮行式を行い、職員らは「『来てもらって良かった』と思ってもらえる活動を」と決意を表した。
熊本地方では今月14日から相次いで地震が発生。多くの住民が被災する中、勝久会は交流のある福岡県大川市の社会福祉法人関係者から「高齢者や障がい者らを介護する人が不足している」という情報を受け、介護職員の派遣を決定した。
派遣されるのは、勝久会に所属する介護士や介護福祉士ら。4人ずつの2陣(23~28日、27~5月2日)に分かれ、要介護者らが集まっている熊本県南阿蘇村などの施設に向かう。
壮行式には、勝久会の役員や職員ら約40人が出席。派遣職員に対し、木川田理事長は「私たちは、被災現場における介護や看護の専門家の必要性を東日本大震災で学んだ。その経験と培った技術を生かし、現地の人たちに尽くしてきてもらいたい」と鼓舞した。
派遣職員を代表し、陸前高田市の介護老人保健施設・松原苑の入澤美紀子看護部長は「5年前は熊本県の多くの仲間から支援をいただき、今でも忘れることはできない。勝久会の職員の一員という自覚を持ち、安全第一に活動してきます」と貢献を誓った。
第1陣の派遣職員らは、19日から28日まで熊本県で介護支援を行っている大船渡市の社会福祉法人典人会(柏貴美理事長)の職員らの活動を引き継ぐ。食料や寝床などは現地に頼らないよう事前に準備を整えており、災害支援の〝手本〟となる自己完結型の活動を心がける。
物資と職員現地へ向かう/陸前高田市

物資を積んだトラックが出発=高田町
陸前高田市からは22日、熊本県宇土市と益城町に向けて、現地で不足気味の物資を積んだトラックが職員3人とともに出発した。
宇土市は、地震によって5階建ての市庁舎の4階部分が押しつぶされるなどの被害を受けた。同市の元松茂樹市長は、49歳までに当選した市長で構成する全国青年市長会に所属。5年前は戸羽太陸前高田市長も所属し、同会から職員派遣などの支援を受けた。また宇土市と益城町からは、奇跡の一本松保存事業への寄付も寄せられた。
陸前高田市は現地と連絡を取り、水12㌧やカップ麺3000食、缶詰類数種類を1000食ずつ、紙コップや紙皿、ラップ、ゴミ袋などを確保。物資を積んだ10㌧トラック2台と防災局、総務部職員計3人が現地へ向かい、物資の仕分けやニーズ調査を行う。
同日は市消防防災センター前で出発式が開かれた。多くの職員が見守るなか、戸羽市長が現地へ向かう職員らを激励し、職員を代表して防災課の中村?雄課長補佐(43)が「自治体職員やボランティアだけでは仕分けが難しく、被災者に届きにくいと思うので、そのお手伝いができれば。市民の思いも届けてきたい」と述べた。
物資と職員は24日朝に宇土市に到着する。
一方、同市高田町の高田高校仮設住宅では、自治会(佐々木芳勝会長)の会費などから募金をねん出。状況を見て熊本へ届けたいとしている。
同仮設団地では、住民たちが朝の語らいのひとときを過ごす「コーヒータイム」の場で「熊本・大分の被災地に何かできることはないだろうか」と話題に上り、自治会費から1戸あたり500円ずつを募金に充てることが決まった。さらに、以前この仮設で暮らし、現在は災害公営住宅へ移った元住民からも募金が寄せられ、これまでに4万円弱が集まったという。
現地ではまだ道路状況などが悪く、今訪ねても混乱が生じると見られることから、住民の菊池一男さん(56)は「少し落ち着いたら、被害が大きかった自治体へ届けたい。送金することも考えたが、被災した自分たちが経験を伝えることで、少しはあちらの人を元気づけられるのでは」と話していた。
9施設で募金活動開始/住田町

熊本地震の義援金を受け付ける募金箱を町内各地に設置=住田町役場
県共同募金会住田町共同募金委員会(委員長・多田欣一町長)は町内の各施設に募金箱を設置した。義援金を募っており、町民らに広く協力を呼びかけている。
今回用意した募金箱には、熊本県の観光や産業をPRするキャラクター「くまモン」を配した。義援金はすべて中央共同募金会を通じ、被災地へ贈られる。
町役場の町民生活課と総務課の窓口をはじめ、農林会館、上有住地区公民館、保健福祉センター、すみたよりあいカフェ「しょうわばし」、JA大船渡有住支店、同世田米支店、道の駅種山ケ原ぽらんではすでに受付中。29日(金)には世田米の住民交流拠点施設「まちや世田米駅」にも置く。設置は5月9日(月)まで。
同委員会では多くの協力を呼びかけ。事務局を置く町社会福祉協議会では、中央共同募金会で募集している義援金の受け付けも行っている。問い合わせは社協(℡46・2300)へ。