収穫の喜び“ニョキッ”、制限解除のタケノコ生産者が震災後初の本格出荷/陸前高田
平成28年5月3日付 7面

陸前高田市の六つの町で国のタケノコ出荷制限解除を受け、生産者による収穫作業が始まった。震災発生から5年を経ても原発事故による放射性物質の影響を受けて、さまざまな品目で出荷制限がかかる気仙の山の幸。タケノコの「解除」は県内で最も早く、震災後初の本格出荷にこぎ着けた生産者がニョキニョキと生える山の恵みの収穫の喜びを味わっている。
東京電力福島第1原発事故を受け、県内2番目のタケノコ生産量を誇る陸前高田市では平成25年4月、8町全域で国の出荷制限指示が出された。気仙3市町の中では陸前高田市のみで、県内では奥州、一関両市でも同様の制限が続いている。
今回解除されたのは、竹駒、気仙、高田、米崎、小友、広田の計6町。県と市が25年春から27年春までの3シーズンにわたって、放射性物質濃度の経年変化を調査し、濃度が十分に低いことを確認できたことから、今春収穫したものから出荷可能となった。
これを受け、竹駒町新田の伊藤文二さん(85)方では4月下旬から、自宅裏の竹林に生えるタケノコを収穫している。
震災前は1シーズンで加工用も合わせて300~400㌔ほどを産直施設などに出荷していたという伊藤さん。生産が軌道に乗り始めた時期に震災に遭い、出荷先が被災するなどしたため、その後は収穫をできずにいた。
出荷制限中も冬季に自生地の土の上にわらをかぶせて生育に適した土壌をつくったり、日当たりを保つために竹を間伐するなど手をかけてきた。待望の解除に「やっぱりうれしいね」と喜びを語る。
昨年実施した検査により国が定める基準値(1㌔当たり100ベクレル)の半分を超えたため、解除対象外となった横田町、矢作町について、県や市は今後の検査値を確認しながら解除要請を行うか判断することとしている。
本県の野生山菜のうち、国の出荷制限指示が出されているのはコシアブラ、ゼンマイ、ワラビ、セリ、タケノコの5品目。気仙では陸前高田市でワラビ、タケノコ、住田町でコシアブラ、ゼンマイが対象となっている。このほか、陸前高田市のコゴミ(野生)は県の出荷自粛要請も出されている。