「自立」への施策展開促す、国が復興交付金の対象拡大
平成28年5月8日付 1面

復興・創生期間(平成28年度~32年度)を迎え、復興庁は、「住まいの整備などが着実に進展し震災復興の新たなステージに入った中で新たに顕在化している課題に対応する」として、復興交付金の効果促進事業の対象事業を拡大させ、このほど発表した。復旧・復興事業で傷んだ道路の補修、観光振興、離半島部などの暮らしの再建支援の大きく3点を対象として明確化したもので、被災地の自立につながる施策展開を促していく考えだ。
観光振興なども
国は復興・創生期間における基本方針の中で、10年間の復興期間の総仕上げに向けた新たなステージにおいて、多様なニーズに切れ目なくきめ細かに対応し、人口減少など「課題先進地」である被災地において自立につながり地方創生のモデルとなるような「新しい東北」の姿を創造すると掲げる。
復興交付金は、防災集団移転や災害公営住宅整備など復興地域づくりにかかる基幹事業について、県や市町村が計画をつくって復興庁に申請し交付を受けるもので、これまで2兆8700億円余の交付が決まっている。
今回、対象事業が拡大されたのは、基幹事業に関連して自治体が自主的に実施する事業を補助する効果促進事業分。比較的自由度の高い補助金だが、復興庁では28年度末で災害公営住宅の約85%、防災集団移転の約70%が完了すると見込む一方、震災から5年が経過した中で生じている新たな課題への対応が必要だとして、新たに3点への対応を明確化させた。
このうち、復旧・復興事業により損壊した道路舗装の補修は、工事に伴う大型工事車両の通行量増加により一部市町村道に舗装の損壊が確認され、安全な通行確保のため補修の必要性が生じているとし、国関連の各種復旧・復興事業に起因する市町村道の損壊の補修費用について、復興交付金でまとめて支援を行う。
観光振興は教育旅行をはじめとした観光客受け入れを支援するもので、▽廃校舎を宿泊施設や体験施設として活用するための改修など▽ 地域資源・観光資源を生かした観光者向けコンテンツや体験プログラムづくり▽観光者向けコンテンツの情報発信の取り組みなど──を後押しすることとしている。
離半島部などの暮らし再建支援では、被災により集落の生活機能が失われ、民間の小売店などがないよう集落での生活を守るべく、食料品・日用品を販売する小型店舗の整備、コミュニティバスの導入、低地部と高台移転地の移動利便確保などに向けたバス停機能の強化といった活用事例を挙げる。
すでに自治体に配分したが使途が定まっていない分についても、これら事業への活用を認める。気仙両市でも大規模な造成を要す一部の防災集団移転団地を除き、住まい再建型の事業は落ち着き、移転地での生活利便向上や交流人口拡大などに向けた知恵の出しどころを迎える。今回の拡大分に該当するような取り組みも一部見られ、今後どのように活用していくか注目される。