市民らが幅広く活用、コミュニティホール1周年/陸前高田
平成28年5月12日付 1面

陸前高田市高田町の市コミュニティホールが11日、一般利用開始から1年を迎えた。380人収容可能な「シンガポールホール」のほか、大中小の会議室、和室などを備え、市民らが広く利用。震災以降停滞していた活動の再開や、コミュニティー活性化のきっかけを生む拠点となっている。
同ホールは東日本大震災で被災した高田町の「ふれあいセンター」に準ずる施設。シンガポール赤十字社が震災を機に創設した「ジャパン・ディザスター・ファンド2011」からの支援を活用し建設された。
大ホール(シンガポールホール)のほか、利用人数によって使い分けられる会議室、畳敷きの集会室、調理室などがあり、イベントや会議等、多目的に利用可能。広いエントランスホールは絵画や写真の展示などに利用されることもある。
同施設は高田地区コミュニティセンター、高田公民館としての設置でありながら、今も公共施設の再建が途上にある同市においては、「市民会館」のような役割も果たす。同町以外の地区の催しや、支援コンサート開催など、外部からの利用申請も多い。
貸し出し状況を見ると、昨年5月の開館当初は利用件数が93件、6月が103件で、利用者数はそれぞれ5291人、3938人にとどまったが、半年後の10月には利用件数が208件、利用者8681人と激増。内訳も、コミュニティー活動から市・官公庁の会議・研修利用、イベント開催と幅広い。
市民芸術祭の展示や行事の実施、中学生の吹奏楽コンサートの開催、陸前高田商工会女性部によるチャリティーダンスパーティーなど、芸術文化活動の活性化、震災後中止されていた行事の再開などにも一役買っている。
月によって利用件数にばらつきはあるものの、「こういう施設があるということが広く浸透してきたのでは」と語るのは、予約受付などを受託する高田地区コミュニティ推進協議会の小松三生会長(72)。ただ、今年3月には1903件の利用があった一方、開館から初めて迎えた大型連休の貸し出しはほぼゼロ。「『ゴールデンウイークに陸前高田へ人を呼ぶ』というような力が、まだ戻っていないということでは」と小松会長はみる。
さらに、商業ホールとは異なり、同施設はあくまでも〝コミュニティ〟ホール。「住民による住民のための施設。利用後も自分たちでの『現状復帰』をお願いしている」と会長が話す通り、後片付けや備品の返却など、利用する側に基本的モラルも求められる。
「陸前高田はまだ復興途上。しばらくはこのホールが市民活動の〝主役〟となるだろう。コミュニティー維持などのために使ってもらえれば」と会長。災害時の防災対応機能も豊富に備える同施設が、ますます市民に利活用されることを願う。