花と新緑が登山者歓迎、近年まれにみる人出に/氷上山の山開き(別写真あり)

▲ 見ごろを迎えたツツジのトンネルをくぐる登山者たち=氷上山

 陸前高田市に位置する氷上山(874㍍)の山開きが15日に行われた。澄んだ青空がいっぱいに広がる五月晴れに恵まれ、例年より多いおよそ330人が9合目の祈祷ヶ原へ。萌え出した木々の緑と木漏れ日、赤いツツジの花が登山道を鮮やかに彩り、大勢の登山者たちを優しく迎え入れた。

 

 登山開始に先立ち、高田町の氷上神社では「山開き式」を実施。登山者の安全を祈る神事のあと、熊谷守宮司は「『874(話)にのぼる氷上山』と言われ、漁業者も海上の安全を願って登った山。海が望めるだけでなく、11月中旬から下旬にかけては、運が良ければ雪をいただいた岩手山を見ることもできる」と述べ、同山が広く愛されると同時に信仰の対象であったことについても語った。
 昨年に続き絶好の登山日和となった同日は、いくつかの登山コースから〝健脚家〟たちが出発。木々の間からは若葉を透かすように日が差し込み、見ごろを迎えたツツジの朱赤を引き立たせた。訪れた人たちは小さな山野草や、途中から見晴らせる広田湾の景色にも歓声を上げながら山頂を目指した。
 平地が広がる9合目の祈祷ヶ原では、市観光物産協会のメンバーらによる恒例の豚汁振る舞いも。例年200食ほど用意するが、この日は五つの鍋いっぱいに作った300食以上の豚汁があっというまに〝完食〟となった。
 9合目と、山頂へ向かう道の途中からは、広田湾のみならず大船渡湾まで一望できる。好天に恵まれたこともあり、山桜やツツジのつぼみ、新緑がフレームとなった美しい景観に、登山者もため息をもらした。
 高田町の村上栄輝さん(43)菜穂子さん(39)夫妻は、娘の万桜さん(9)優杏ちゃん(6)の4人で初めて氷上山へ登ったといい、栄輝さんは「天気が良かったおかげで景色がきれいに見えた。復興の状況なども、ここからだとよくわかりますね」と、かさ上げや防潮堤工事が進む同市の現状も確認した。
 ツツジはまもなく満開。同山が「原木発祥の地」と言われるベニヤマボウシもじき咲き始める。観光物産協会は登山者に火の始末やごみの持ち帰りを促し、美しい山の景観を守るよう呼び掛けるほか、鈴やラジオを携帯するなどのクマよけに対する注意喚起もしている。