開け 復興ホヤの販路、生産本格再開の綾里漁協 盛岡卸売市場で売り込み(別写真あり)
平成28年5月21日付 1面

大船渡市三陸町の綾里漁協(佐々木靖男組合長)などは19日、盛岡市中央卸売市場を訪ね、東日本大震災津波での壊滅的被害から再開し、生産が本格化しつつある綾里産ホヤの販路開拓に向けたPR活動を行った。有力な輸出先とみていた韓国が東京電力福島第1原発の事故を理由に水産物の輸入を規制し続けていることで「出口」確保は難しくなっており、同市場内の水産物卸業者と意見を交わしながら道筋を探った。
韓国の禁輸措置響く
養殖ホヤは出荷まで2~3年を要するがおおむね5月から翌年3月まで水揚げでき、周年従事できる養殖品目となっている。綾里漁協ではワカメやホタテに次ぐ主力として育てようと普及を図り、近年は二浜、野々前・白浜、前浜の各地区で年間約900㌧が生産され、「1億円産業」へと成長を果たしてきた。
平成23年の大津波では養殖施設すべてが流失するなど壊滅的な被害を受けたが、国の「がんばる養殖復興支援事業」などを導入して再開への努力を続け、25年6月には出荷にこぎつけた。
ワカメやホタテは県漁連が一括販売する系統共販だが、ホヤは綾里漁業単一での出荷。震災前の出荷先は需要の高い韓国が大きな割合を占めていたが、奇しくも同漁協の出荷再開から3カ月後の25年9月から、同国は岩手、宮城、福島、青森、茨木、栃木、群馬、千葉の各県産の水産物の禁輸措置をとった。このため、震災前から取り引きのある買受業者を通じた国内出荷を柱としているが、生産量が伸びていくのに比例して販路開拓の必要性が重みを増している。
同日は、佐々木組合長や川上明参事、前浜の生産者らが4年もののホヤを持って中央卸売市場に足を運び、盛岡水産㈱(菊池一裕社長)と、回転ずしの「清次郎」などを展開する田清グループで㈱田清水産(工藤吉昭社長)の水産物卸業2社を訪ねた。市の尾坪明農林水産部長と佐々木毅商工課長、新沼邦夫大船渡商工会議所常務理事、漁協と両社の橋渡し役となった市議会会派「改革大船渡」(船野章会長)の3議員などが同行した。
佐々木組合長は生産再開までの道のりに触れながら、「震災前に見劣りしないホヤがまた生産できるようになったが、韓国が輸入を受け入れない状況が続いており、販路を充実させるためにも県内でのつながりを一層強めていければ」とあいさつ。
会社側は菊池、工藤両社長や鮮魚部門担当者が対応。1個当たり250㌘以上という出荷サイズに育ったホヤを手に取りながら、取り扱いに向けた細部についても話し合うなどした。盛岡水産の白澤徹専務は「これを機にパイプを太くして互いの商売繁盛に努めたい」、田清水産の工藤社長は「もっと三陸の商品を県内に紹介したいと思ってきた。浜からはもちろん、秋田や青森までおおむね2時間というこの市場の利点を生かすためにも、流通・物流面の課題をクリアしていければ」と前向きだった。
佐々木組合長は「あれだけの被害を受けながら、生産者の懸命の努力でようやく販売サイズまで育った。新しい売り先の道筋が見えたことは非常にありがたいこと」と話している。