住田町役場にまた栄誉、CO2排出削減で高評価

▲ 幅広い分野から高い評価を受ける住田町役場=世田米

東北では唯一「カーボンニュートラル賞」

 

 一昨年7月末に完成した住田町役場の「森林資源を活かした新庁舎建築事業」が、第4回カーボンニュートラル賞(建設設備技術者協会主催)に選ばれた。全国から8件が選定され、東北では唯一の受賞で、岩手の建築物が選ばれたのは今回が初めて。地域産業のシンボル的な存在の木造庁舎に、新たな栄誉が加わった。

 同賞は建物からの二酸化炭素排出をできるだけ削減する建築設備などの取り組みと、建築主や設計者、施工者をはじめとした関係者を表彰する事業。今回は、19件の応募があった。
 審査では住田町役場を含む8件を賞として選定。この中から大賞には「大成建設ZEB実証棟」(大成建設、神奈川県横浜市)が選ばれた。
 住田町役場に関する取り組みの代表応募機関は、設計や施工の共同企業体を担った前田建設工業(本社・東京都)。27日に開かれた同協会東北支部の28年度総会席上で表彰が行われた。
 新庁舎は2階建ての純木造建築物で、主要構造部は集成材で構成。町内面積の約9割、3万㌶を超える森林資源を持つ中、構造材の7割に町産のスギ、カラマツを使用している。
 二酸化炭素を吸収・固定する木材をふんだんに生かし、建設時における発生を抑制した形に。製材時の木質廃棄物は燃料源となるペレットに加工されるほか、発生した分の二酸化炭素が森によって吸収される「カーボンオフセットサイクル」を形成。地元産材の活用により、輸送車両からの排出削減にもつながった。
 建物の内部は、四つのシンプルな大空間の構成としている。建物の南側には吹き抜けの交流プラザと町民ホールがあり、北側の執務スペースは1、2階とも仕切りのない空間が広がる。
 省エネにつながる自然換気を導入しているほか、ジグザグとなっているラチス状の耐力壁からは自然採光も確保。交流プラザでは木質ペレットによる冷温水発生機を熱源とした床暖房も設備し、太陽光発電に加えLED照明も採用した。
 こうした整備により、二酸化炭素削減率は22%を計上。さらに、通常耐震性能の1・5倍という地震耐力も確保している。
 新庁舎は完成以降、林野庁長官賞や県知事賞などを受け、木造空間や地域資源活用といった面から高い評価を受ける。町では「森林・林業日本一の町づくりを進めているシンボル的な施設。こうした賞を受けることで、今後の施策にも弾みがつく」としている。