ゴルフカートで近距離輸送、大船渡駅周辺で実証実験/大船渡市

▲ 持続可能な交通システムの確立に向け、公道走行が可能なゴルフカートによる実証実験を実施へ(写真は実際に利用する車両、市提供)

持続可能な交通システムを

 

 大船渡市は、東京大学大学院新領域創成科学研究科鎌田研究室(鎌田実教授)、同市のまちづくり会社・㈱キャッセン大船渡(田村滿代表取締役)とともに6月から「次世代モビリティの実証実験」に取り組む。大船渡町のJR大船渡駅周辺における大船渡地区津波復興拠点整備事業区域で、公道走行が可能なゴルフカートを運行し、地域住民や買い物客らの近距離輸送を試験的に展開。実験を重ねながら、持続可能な交通システムの確立を目指す。

 この実証実験は、大船渡地区津波復興拠点整備事業区域とその周辺において、地域住民や観光客らの近距離移動にかかる持続可能な交通システムを確立するのが目的。実験に当たり、市は26日付で鎌田研究室、キャッセン大船渡と共同で行う旨の覚書を締結した。
 実験の目的は、▽拠点区域における来訪者が周遊するための交通手段の確立▽拠点区域の周辺に居住する高齢者等の買い物支援手段の確立▽災害などの非常時における防災対策手段の確立▽地域のにぎわいや都市観光の機能の確立▽地域の代替交通としての確立および車両や電気自動車給電網の現実的な導入の仕組みの確立──。
 鎌田研究室が所有する次世代モビリティをキャッセン大船渡が運行し、市は実施にかかる調整を担う。地域住民や観光客に「大船渡でしか経験できないものごとを提供する」という意味合いも込める。
 実験に用いる次世代モビリティは、鎌田研究室がメーカーと共同で開発した、日本初の公道走行を可能とするゴルフカート。高齢化が進む日本において、運転困難な人の次世代交通機能として、本格展開を見据えて開発された。
 4人乗りの電気自動車で、電磁誘導による自動運転も可能。最高速度は時速19㌔。これまでに、石川県輪島市や大槌町でも実証実験が行われている。
 北米などでは、簡易な構造のために乗降がしやすく、十分な走行性能などを有していることから、近距離移動手段としてゴルフカートを活用。高齢者の移動手段として、域内交通に役立てているという。
 初年度となる平成28年度は、市内で開催予定の各種イベントで市民向けの試乗運行を行う計画。車両1台を運行し、多くの市民らに試乗してもらいながら、実証試験と次世代モビリティについて広く理解を深めてもらおうとの考えだ。
 初回の試乗運行は6月2(木)3(金)の両日、マイヤ新大船渡店のオープンに合わせて実施。時間は午前10時から午後5時まで。キャッセン大船渡のスタッフが希望者を乗せ、JR大船渡線BRTの大船渡駅から同店までの間を輸送する。運行を担う同社では、「エリア内で利用してもらい、ストレスなくまちを歩くツールになれば」と期待を込める。
 実施する3者では、実証試験を通じてカートの乗り心地や近距離移動に必要な機能などを調査し、より良い車両のあり方を検討。また、コミュニケーションツールとしての確立にも向け、運転手と乗客とのコミュニケーション、観光とのかかわり、高齢者の買い物支援などにも目を向けていく。
 来年度以降は、拠点区域の整備状況を踏まえながら具体的な実験の内容や適切な車両台数について検討を進めていく計画。将来的には、乗客が選択した目的地まで自動走行する車両、交通システムの構築を目指したいとしている。
 市災害復興局大船渡駅周辺整備室は「まずは世代を超えた多くの方々に試乗してもらい、触れる機会をつくりたい。コミュニケーションと支援の新たなツールになっていけば」と話している。