過重労働解消へ「気仙宣言」、復興工事受発注者が初の会議(動画、別写真あり)

▲ 復旧・復興工事の受発注者が過重労働解消に向けた「気仙宣言」を採択=大船渡商工会議所

大船渡労基署が呼びかけ

 

 大船渡労働基準監督署(熊谷久署長)の呼びかけで30日、「震災復旧・復興工事での過重労働解消を目指す気仙会議」が、大船渡市盛町の大船渡商工会議所で開かれた。一日も早い復旧・復興が求められる一方、現場の過重労働が課題として重みを増しており、発注の行政などと受注業者が共同でこの解消に向けた「気仙宣言」を採択。双方の垣根を越えた取り組みに連携することを決めた。
 復旧・復興工事の早期完工が求められながらも人手は不足しているという状況が続く気仙。労働者から同署への相談件数は震災前の1・5倍~2倍にあたる年間500件ほどで推移し、時間外・休日労働関係が4分の1を占める。3月には大船渡市内の関連工事現場で作業所長の40代男性が亡くなり、翌4月に違法な長時間労働をさせた疑いで会社と現場責任者が書類送検されるケースもあるなど、深刻さを増す。
 こうした中、同労基署では工事発注者と施工業者が過重労働解消に一丸となって責任を果たしていく意思を地域の総意として明確に示す機会を設けようと、「気仙会議」の開催を検討。
 発注側として大船渡、陸前高田両市、県沿岸広域振興局、東北地方整備局南三陸国道事務所、UR都市機構岩手震災復興支援本部、JR東日本東北工事事務所に参加を求めた。
 受注側は、気仙両市で行われる請負金額おおむね20億円以上の復旧・復興関連工事の元受業者でつくる気仙地区復旧・復興関連大規模建設工事安全衛生等連絡協議会と県建設業協会大船渡支部、県建設業女性マネジングスタッフ協議会大船渡支部に呼びかけた。
 この日はそれぞれの代表者ら14人が出席。▽震災復旧・復興工事に携わる労働者の過重労働を容認しない▽震災復旧・復興工事に携わる労働者の適正な労働時間管理や過重動労の未然防止に向けた職場環境づくりに協力して取り組む▽気仙地域の取り組みを他地域にも発信・展開し、あらゆる震災復旧・復興工事での過重労働解消を目指す運動につなげる──とした「気仙宣言」を満場一致で採択。具体的な取り組みの推進母体として担当者レベルのフォローアップ会合を四半期に1回のペースで開催することも確認し合った。
 受発注者が東日本大震災復旧・復興工事にかかる過重労働解消をともに考える初めての試みになるといい、熊谷署長は「気仙地域は人命の尊さを身をもって体験してきた。復旧・復興工事の過程で新たな犠牲者を出さないという強い決意のもと発信する場所として、この気仙ほどふさわしい場所はないと信じている」と力を込める。 
 発注側として出席した戸田公明大船渡市長は、「市としては標準工期にのっとり、条件変化によって延長を要す場合は業者とその都度協議して対応してきた。気仙宣言にかかる取り組みもこの形を原則として考えたい」、陸前高田市震災復興事業共同事業体で現場代理人を務める小出直剛さん(清水建設)は「(フォローアップ会合が)本音を言い合って課題を解消できる場になれば」と話していた。