初の市外資本ホテル開業、ルートイン大船渡 同業者と共存共栄探る

▲ 初の市外資本として29日に開業したホテルルートイン大船渡=大船渡町

 全国にホテルなどを展開するルートインジャパン㈱(永山泰樹代表取締役、本社・東京都)は29日、大船渡市大船渡町字野々田に「ホテルルートイン大船渡」を開業した。初の市外資本によるホテルとなり、建物は市内最大規模の7階建てで、客室総数は210室。「復興支援ホテル」として位置づけ、市内の宿泊関連業者とは互いの魅力を生かした差別化を図ることなどで共存共栄の道を探りたい考えを示しており、復興事業の促進や地元経済の活性化、観光振興に貢献していきたいとしている。

 

魅力生かし差別化図る

 

 同社などのルートイングループでは、東日本大震災後の平成25年に岩手、宮城、福島の被災3県で複数施設の開業を見据えた「東北復興事業計画」を発表。大船渡への進出もこの一環であり、中心市街地再生を目指して整備が進む大船渡駅周辺土地区画整理事業区域内に建設した。県内では9店舗目、グループホテルでは267店舗目の開業となった。
 建物は鉄骨造7階建てで、敷地面積は4266・53平方㍍、建築面積は872・42平方㍍、延床面積は4923・61平方㍍。ルートイン開発㈱が総合企画を手掛け、㈱久慈設計が建築設計と監理を、㈱タカヤが施工を担った。総事業費は約13億6000万円。
 客室総数は210室で、シングル146室、セミダブル12室、ダブル6室、ツイン45室、バリアフリールーム1室からなる。このほか、駐車場、レストラン、大浴場などを設置。基本の宿泊料金は、シングル1泊で税込み7200円。6月30日(木)まではオープン記念キャンペーンとして、シングルは特別価格で宿泊できる。
 宿泊に特化した営業となり、レストラン、大浴場は宿泊者のみが利用可能。レストランでは、朝食バイキングと1泊2食プランの予約者専用で夕食を提供する。
 ホテル側によると、予約状況は30日以降、6割程度が埋まっており、1カ月平均では7割を見込む。予約者の中には、260日の長期宿泊もあるという。
 被災地では、宿泊施設の不足によって復興事業に遅れがみられる現状もある。ルートインジャパンでは、被災地の復興を促進したいと、大船渡を「復興支援ホテル」と位置付けて整備。
 これまで釜石市や宮城県気仙沼市などに宿泊せざるを得なかった大船渡、陸前高田両市の復興事業関係者を受け入れ、地域経済活性化の一助にしたいとする。また、28㍍という建物の高さも生かし、津波発生時には避難ビルとしての活用も見込む。
 一方、初の市外資本によるホテルの開業にあたり、市内の宿泊関係業者では宿泊に特化したルートインとは差別化を図り、共存共栄の道を探りたい考え。宴会や結婚式、日帰り入浴などといった宿泊以外の機能充実、地元産の新鮮な海の幸を使った料理によるもてなしなど、各施設ならではのサービスに力を入れていくとしている。
 ルートインジャパン側も「お客様の層では、市内の宿泊業者と戦わないようにしていきたい」と、地元同業者との共存共栄を図っていきたい考えを示す。同社東北第1地区の萬田洋介地区支配人は「復興需要が落ち着くまでは、顧客の取り合いというよりはこれまで市内や陸前高田市に泊まれなかった方々を受け入れていきたい。そうすることで地元経済活性化への貢献につながれば」と話す。
 このほか、夕食の提供は1泊2食プランの宿泊客に限られることから、素泊まり客を中心とした周辺飲食店への波及効果も期待されている。
 開業によって、新たな雇用創出も図られた。雇用人数は29人で、このうち気仙管内からの雇用は21人(正社員1人、パート20人)。
 しかし、実際にホテル側が見込んだ雇用人数は40人。希望者が少なく人手不足の状態で、連泊の客室清掃は基本週に1回とし、レストランでのアルコール類提供を控えるなどの対応を余儀なくされているという。
 当面はグループ内のホテルから応援を要請し、サービスを提供。併せて、短時間や空いた時間に働ける点などをPRしながら、人員確保と雇用創出の拡大に努めていきたいとしている。