鍛冶体験の鉄が農具に、初めて加工/有小6年生が畑で活用(別写真あり)

▲ 畑作業を終え、くわを囲む児童たち=住田町上有住

「私たちのくわ」できたよ

 

 住田町立有住小学校(都澤宏典校長)の児童たちがこれまで製鉄・鍛冶体験で加工した鉄の延べ棒の一部が、農具の一つ・くわに加工された。前年度体験した6年生17人は1日、授業の一環として野菜を育てる畑で活用。製鉄の苦労を知る児童たちは、ズシリとした重さが伝わる鍬を手にし、地域の誇りをさらに高めていた。

 町教委は同校5年生を対象に、平成24年度から「住田の森林のおくりもの~栗木鉄山物語~」として、住田の森林や製鉄の歴史などを学ぶ機会を設けている。世田米字子飼沢地内の栗木鉄山は明治14年に初めて高炉が建てられ、大正9年まで操業。一時は国内4位(民間3位)の銑鉄生産量を誇ったとされる。
 現6年生は昨年秋、たたら製鉄体験で抽出した鉄の部分・鉧(けら)を材料に鍛冶体験に挑戦。800~1000度に熱し、延べ棒状にしていった。
 栗木鉄山で生産された鉄は、農具としての需要があった。町教委では子どもたちに手にしてもらおうと、本年度初めて加工。鍛冶体験で講師役を務めた宮古市の刀匠・辻和宏氏に依頼した。現中学1年生による26年度分と、現6年生が体験した一部をそれぞれ活用し、2種類のくわをつくった。
 刃先が4本に分かれたくわは、26年度分の鉄から加工した。鉄部分の長さは約20㌢、幅は17㌢、厚さは0・7㌢。
 一方、長方形型のくわには昨年度の鉄を使い、長さ22㌢、幅6㌢、厚さは0・2㌢。木製の柄を手にすると、鉄独特のズシリとした重さが伝わる。
 鍛冶体験では、鉄の延べ棒を薄くしようと、力を込めて金槌を打ち続けた。くわの刃となった鉄はさらに薄く延ばされたが、なめらかな直線には仕上がっておらず、手作業でつくりあげた証となっている。児童たちは間近で眺め、苦労の記憶をよみがえらせた。
 いずれも一般的なステンレス製に比べると小型だが、児童たちにとっては扱いやすい大きさ。この日は勤労生産学習の一環で、民俗資料館前の畑でプチトマトやトウモロコシを植えるための土起こしが行われ、初めて手にした。
 作業では畑でくわを振り、野菜が育ちやすい環境を整備。
 6年生の深野颯太君は「掘れる量が少ないけど、軽くてやりやすかった」と話し、笑顔を見せた。
 くわは、同校に隣接する民俗資料館で展示。製鉄・鍛冶体験は、本年度も5年生を対象に計画されている。