国指定文化財申請へ始動、栗木鉄山跡指導委員会議が初会合/住田町
平成28年6月9日付 7面
住田町教委による初の栗木鉄山跡調査指導委員会議は8日、町役場で開かれた。明治から大正にかけての製鉄遺跡として平成9年に町指定、11年に県指定の各史跡となっているが、さらなる史跡価値の明確化を図ろうと、発掘調査を経て33年度までに国指定文化財申請を目指す流れを確認。この日は過去の調査や水沢市史などに残る記憶図をもとに、調査の方向性などを探った。
調査経て33年度までに
委員は小野寺英輝氏(岩手大学工学部機械システム工学科)熊谷常正氏(盛岡大学文学部社会文化学科)小向裕明氏(大槌町教委埋蔵文化財調査課)佐々木清文氏(埋蔵文化財セ)の4人で構成。県教委生涯学習文化課担当職員や町教委職員を加えた11人が出席した。
冒頭、菊池宏教育長は「国指定に向けて本格的に取り組むこととなったが、まだ緒に就いたばかり。さまざまな角度から指導いただきたい」とあいさつ。委員長には熊谷氏が選ばれた。
栗木鉄山跡は主に世田米の国道397号栗木トンネルの種山側に位置し、付近には大股川が流れる。明治から大正にかけての製鉄所で、一時は国内4位(民間3位)の銑鉄生産量を誇った。石垣や水路、高炉の位置などを示す遺跡が見られる。
仙台領における文久山高炉の流れをくむとされる。第一高炉については、製鉄史の中で大島高任式高炉の掉尾(最終期)を飾るとの位置づけがなされている。
平成5、8、9、10年の計4回にわたる試掘調査では、閉山時の遺構が極めて良好な状態で保存されていることが明らかにされた。19年の大雨などにより、第二高炉北側の石垣の一部が崩壊し、高炉等への影響が懸念される状況となったため、23年に石垣復旧工事が行われた。
町教委ではこれまでの経過や歴史的な価値をふまえ、貴重な遺跡の保全を進めるとともに、住民をはじめ多くの人々に学びの場を提供できる環境整備推進を見据える。さらなる史跡価値の明確化や内容調査、保存活用を目的に委員会を設置した。
この日は国指定申請までのスケジュールや今後計画する内容確認調査の体制について協議。町教委の案では29年度から調査を進め、33年度に申請との流れが示された。委員からはこれまで行われた調査研究をふまえ「前倒しできないか」との声もあった。
また、「鉄の村」として従事者の生活基盤なども含め全域を重視する考えから県指定範囲よりも広げる必要性も話題に。
水沢市史によると、奥州市側に工員住宅や郵便局などがあり、大船渡市側に空中ケーブル設備となる鉄索の原動機室や新溶鉱炉が配置されていた。鉄索や各建物位置に関する調査の方向性なども議論した。
会議終了後、熊谷委員長は「範囲やこういう遺跡が残っているという調査をしっかり進め、指定に向けた動きを進めたい。橋野(釜石市)をはじめとした北上山地の製鉄に関するネットワークの形成や、住田の文化財を活用したまちづくりの口火となれば」と語った。次回は今秋に開き、現地視察などを行うことにしている。