住民向けに説明会、住田遠野風力発電事業

▲ 住民向けに行われた説明会=住田町

荷沢周辺で35基計画

 

 住田遠野風力発電事業(仮称)の事業者説明会は8日夜、住田町下有住の火の土自治公民館で開かれた。全国各地で発電事業を展開する㈱グリーンパワーインベストメント(本社・東京都、堀俊夫社長)が事業主体となり、市町境に位置する国道107号・荷沢峠北東側で最大35基の設置を計画。着工は平成30年7月、運転開始は33年6月を予定し、総事業費は約300億円。これだけの規模での風力発電事業は気仙でも例がなく、注目を集めそうだ。

 

運転開始は33年予定
総事業費は約300億円

 

 説明会には火の土地域の住民ら約20人が出席。同社の松岡正明常務執行役員が今後の展開に理解と協力を求めたあと、同社盛岡事務所の仁平裕之プロジェクトマネージャーが事業説明を行った。
 同社は16年9月に設立。高知、島根、千葉各県ですでに操業し、島根、高知両県で建設中、住田遠野を含む5カ所が開発中となっている。事業実施時は、子会社を設立して運営する。
 予定地は遠野市側が小友町周辺地区で、住田町側は火の土周辺地区。2850㌔㍗の風力発電機を最大35基設置し、総事業費は約300億円とみている。
 現時点では住田町側に5基、遠野市側に18基、市町境に沿って12基の設置で検討。導入を検討している風力発電機は直径が103㍍となる3枚の羽根が回り、風車高は136・5㍍。毎分18回転を見込む。風車の羽根が回転することで発電機を回して発電。電気機器で電圧などの調整を行ったあと、東北電力㈱に供給する。
 年間予想発電量は約2億1900万キロワットアワー。約6万世帯分で、住田町と遠野、釜石、大船渡各市の家庭消費電力に相当する。年間12万㌧以上の二酸化炭素排出抑制につながるとしている。
 風力発電を含む再生可能エネルギーは、原発事故が発生した東日本大震災を機に広がりを見せる。同社では数年にわたる現地調査により、十分な風があることを確認したほか、イヌワシが餌をとる区域も外した。震災前からも関心を寄せていたという。
 昨年までに環境調査を実施し、現在はその準備書策定の段階。来年度に評価書手続きを行う。合わせて詳細・実施設計や許認可取得も進め、着工は平成30年を見据える。工事車両は主に、荷沢北側の小友町・堂場を中心とした出入りになる見込み。
 説明では事業が目指す方向性として、地元建設会社施工や宿泊、食事等による副次的経済効果に言及。固定資産税収入による各自治体の住民サービス充実にもふれた。また、運営では5人程度の採用を見込むなど地元雇用を重視し、売電収入を基金化して地域活動を支援するといった「貢献」も掲げた。
 環境影響評価に関しては、委託を受けた日本気象協会の担当職員が説明。大気質や騒音振動、水質、景観、動植物などで影響の予測、評価を行った。
 各項目とも工事工程の調整に加え、今後計画している対策によって影響低減が図られる方向性を解説。このうち水質に関しては、雨水の流末に沈砂池を設置するほか、土砂流出防止柵も設ける。
 景観に関しては、周辺環境との調和を図ることができる色彩とし、送電線を可能な限り埋没。種山の物見山からは視認できるが、火の土地区や道の駅「種山ヶ原ぽらん」からは見えない。
 出席者からは整備で土が露わになり、土砂災害が懸念されるとしたうえで、対策徹底を求める発言も。山菜採りなどへの影響はないというが、鳥獣被害対策や有害駆除のあり方も話題に上った。一方で、整備自体への異論は出なかった。
 準備書は27日(月)まで、住田町役場などで縦覧中。7月11日(月)までは意見を受け付ける。風車設置場所の計画は別図。

160610-1面・風力発電事業