視覚障がいへの理解にも、広報朗読ボラ「つばきの会」が新会員や生徒らの参加募る/陸前高田

▲ 月2回発行される「広報りくぜんたかた」を分担して読み上げ、録音するつばきの会メンバー=竹駒町

 欠かせない〝声の仕事〟

 

 陸前高田市の広報を音読・録音し、目が不自由な人にCDとして届ける朗読ボランティア「つばきの会」(後川安希子代表、会員16人)。メンバーは「声の広報」づくりを通してハンディキャップへの理解を深め、真に〝住みやすいまち〟とは何かを皆で考え続けている。同市が掲げる「ノーマライゼーションという言葉のいらないまち」に即した活動を継続する上で、新規の会員を募るとともに、小学生や中高生らが録音に参加できるような体制もつくっていきたいとする。


 視覚障がい者の「行政からの情報を知ることができない」という声を受けて発足した同会は、平成26年で活動開始から丸20年を迎えた。27年には福祉をはじめ各分野で地道な活動をした個人・団体に贈られる「東海社会文化賞」を受賞。利用者との交流や「市長と語る会」開催など、目が不自由な人がどんな思いを持ち、何に困っているかを知ること、発信することにも尽力している。
 しかし「声の広報」利用者は昔からいる人に限られ、その数も減少傾向にある。個人情報保護の観点から、ボランティアといえど視覚障がい者の所在等を役所に教えてもらうことは不可能で、相手側から「利用したい」という申し出がなければ対応できないのだ。
 目が不自由な人の中には中途失明者もいる。「それまで『声の広報』を利用しておらず、その存在を知らない市民や、潜在的な利用者がまだいるのでは」──同会は「活動を改めて市民に周知していかねば」と危機感を募らせている。
 活動は原則として月2回、広報の発行に合わせ行われる。現在は竹駒町の旧仮設保育園を利用。以前の録音会場であった高田町のふれあいセンターが被災したため、かつては学校帰りに来てくれていた高校生の平日参加も、今では難しい。加えて会の高齢化も顕著になってきた。
 20年以上続けている会員もおり、「活動が楽しみ」としつつ「もう少し、読む分量を分担できたらね」と悩みを打ち明ける。一方で、町で偶然利用者に会うと「○○さんだよね?」と声をかけられることも多く、「声を聞いただけで判断できるほど、真剣に聞いてくださっているんだ」と居ずまいを正す気持ちになるという。
 「声の広報づくりは、これから先も絶対欠かせない仕事」と後川代表(68)。だからこそ会員を増やし、「土日や夏休みなどに活動日を設定し、年に1回でも2回でも中高校生らが録音に参加できるようになれば」と考えている。
 若いパワーが必要なことはもちろん、活動を通じ「障がいを〝特別なもの〟としてではなく、フラット(平坦)にとらえることができるようになる。それこそが『ノーマライゼーションという言葉のいらないまち』づくりには不可欠」という理由もある。
 後川代表も「最初のころは『目が見えない方にはどんな話をすればいいのか』と身構えてしまっていた。でも実際にはふつうのおしゃべりでいい。『大変ですね』なんていう扱われ方は、相手も望んでいないんです」と語る。
 同時に、「視覚障がい者がどんなことに困っているのか知ることで、ものの見方、考え方の幅が広がった」と語るメンバーも。自らの成長にもつながり、新しいまちづくりを考えるのにも役立っているという。
 利用者から、「目が見えなくなった途端、高田の人でなくなったような気がしていた」「声の広報を聞いて、初めて〝市民〟になれた」と言われたこともある。障がいの有無にかかわらず、同じ市民。そのことを理解し、ほんの少し手助けが必要な人々を支える仲間が、少しずつでも増えていくように…会員たちはそう願っている。
 活動などについての問い合わせは後川代表(℡090・7523・2787)まで。