需要増加や産業創出を、イサダまるごとプロジェクト/大船渡で

▲ 関係者が集まりキックオフ会議を開催=盛町・カメリアホール

 公益財団法人岩手生物工学研究センターは29日、大船渡市盛町のカメリアホールで「イサダまるごとプロジェクト」のキックオフ会議を開いた。イサダに含まれる抗肥満成分などを活用しようという取り組みで、イサダを「全利用」した高付加価値素材の生産体系を構築し、需要増加や産業・雇用創出を目指していく。

 

キックオフ会議開催

 

 イサダ(ツノナシオキアミ)は三陸特有の水産資源で、最盛期には約10万㌧が漁獲されていたが、需要低下により漁獲制限がかかったために現在の水揚げ量は岩手・宮城を中心とした約3万5000㌧にまで低下した。
イサダにはDHAなどを豊富に含むオイルやオキアミ特有の抗肥満成分、動物性たんぱく質、甲殻類特有のうま味、香味成分が含有されている。
 同センターではこれまでの研究で、イサダ水溶性抽出物に肥満抑制効果があることを見いだしてきた。一昨年には、イサダの肥満抑制効果の仕組みを解明し、ダイエット効果で有名なエイコサペンタエン酸の約10倍となる高い活性の「8―ヒドロキシエイコサペンタエン酸」を特定したことなどを発表。
今回のプロジェクトの背景には、イサダに含有されている成分を分離、精製して高付加価値素材として製造、販売することによって利用用途拡大や需要を増加させようという狙いがある。
 農林水産省の「革新的技術開発・緊急展開事業」(予算額500万円)の採択を受けて実施するもので、県や民間企業、大学の連携のもとで健康機能性成分やイサダミール、イサダ調味料生産の商品化を進めている。
 この日の会議には大船渡町の水産加工会社・㈱國洋をはじめ鳥取県に工場を持つ甲陽ケミカル㈱、㈱マリン大王(徳島県)など県内外の民間企業や岩手医科大、香川大、京都大、岩手大、県などから関係者ら約30人が参加。
 同センターの杉原永康理事長は「現場レベルで商品化し、三陸復興のシンボルにしたい。なんとか成功に導きたい」と期待を込めた。
 協議では各機関が研究計画を発表。このうち、國洋の濱田浩司社長は、現在オイル抽出の研究を行っており、成功すれば来年度中には町内でプラントを稼働させたいという考えを示した。
 オイル抽出が成功すれば〝国産〟オイルを売りとしたサプリメントの販売も展開できるといい、生産体系構築により、イサダの需要増加による漁業者の収入増加や、イサダを原料とした高付加価値製品の製造にともなう産業創出、雇用増加が見込まれる。
 杉原理事長は「水産業全体の底上げになる」と力を込めた。