きょう退任、角田大船渡副市長に聞く
平成28年6月30日付 1面

大船渡市の角田陽介副市長(42)は、30日をもって退任し、国土交通省へ帰任する。平成24年4月に国から副市長の任に就き、4年3カ月の間、専門分野である都市計画、まちづくりをはじめとした豊かな経験を生かしながら、東日本大震災からの復旧、復興を進める大船渡の力となってきた。退任に当たっての思いを聞いた。
市政支えた4年3カ月、国土交通省で経験生かす
──就任期間を振り返っての心境は。
角田 最初に来たときは、まだがれきや被災した建物が残っていた。復興計画は立っていたが、具体的な事業をどう進めるか、特に大船渡駅周辺のまちをどうつくっていくかは、そんなに整理された状態でもなかった。どうしていくんだろうな、務まるのかなと思ったのが実感だった。
そのあと、一個ずつ目の前のことを片付けつつ、でも少し最後のゴールを見据えながらやろうと心掛け、無我夢中でやってきたらきょうになったという感じ。
復興は道半ばで、心残りもいっぱいある。しかし、応急仮設住宅や大船渡駅周辺のまちづくりなど、副市長の仕事として今後の方針をつくることについては、一定のめどが立ったという考え方もできるかなと思う。
──市の復興事業について、現状や今後の課題をどうとらえるか。
角田 防災集団移転や災害公営住宅などの住居に関するプロジェクトは、市民の協力、理解も得られていたし、防集などは地域主体でやっていただいた。心配もあったが、何とかゴールが見えてきてよかったと思う。
ただ、応急仮設住宅は最後、退去が困難な方が残るだろう。そういった方にどう対応していくのかをきっちり考えていくことが、今後の課題になる。
大船渡駅周辺のまちづくりも持続させていくのが大変であり、大事。まちができたときがゴールではなく、そこはスタート。皆でしっかりやっていく機運ができたらいいし、そこも課題だろう。
──市民サービス、職員に対してより向上を求める点、期待する点は。
角田 風土に合うかどうかの問題があるが、あまり語らず、あうんの呼吸を求める地域性だと感じる。職員同士、市民サービスでもそういう風になっている部分がある。
本当にあうんの呼吸ならばいいが、結構ミスコミュニケーションも多いように見える。風土的なものは大事にしながらも、特に仕事の範囲では、もう少し踏み込んでコミュニケーションをとることが大事かなと思う。
職員には、ぜひ新しいことにチャレンジしてほしい。その方が仕事も楽しいと思うし、過去の仕事のスクラップになったりもする。前の人がしていたから自分もやるのではなく、いましていることが一つひとつ本当に必要で、市民のためになっているのかを問い直しながら仕事をしてほしい。
──大船渡での経験を今後、どのように生かしていくか。
角田 市役所での勤務は初めてだったが、国では「市役所はこうなんだろうな」と想像しながら仕事をしていた。実際、そんなに想像を外したとも思わないが、実態はこうなんだと分かったこともあった。都市計画やまちづくりが仕事の専門なので、国で今後取り組んでいくうえでも、市町村の方がどういう風に動くんだろうと考えることが大事になると思う。
もう一つは、こちらで仕事をして、都会の人とは違う暮らしをしている人の常識、都会の人が知らない常識がいっぱいあり、無意識に地方の人へ無理を言っていたことも多かったと分かった。こうして感じた二つの側面を、今後の国での仕事に生かしていきたい。
──市民、気仙の方々へメッセージを。
角田 大変お世話になりました。皆さまに教えていただき、何とか任期を務めることができました。大船渡市に来て、本当によかったと思っています。
復興に関していえば、これからもさまざまな取り組み、民間の取り組みも増え、進んでいくでしょう。それを東京から見守り、将来の大船渡を見に行きたいと思っています。(三浦佳恵)