2016参院選/気仙の情勢、決め手探り最終盤へ

▲ 選車に手を振る有権者。気仙でも与野党対決を軸として最終盤を迎えている=大船渡市内で

田中、木戸口両氏が拮抗

石川氏は厳しい戦いに

 

 第24回参議院議員通常選挙は、10日(日)の投票まであとわずかに迫った。岩手選挙区(改選1)には届け出順に、政治団体幸福実現党の石川幹子氏(51)=盛岡市、自民党公認で公明党推薦の田中真一氏(49)=同、民進、共産、社民、生活の4党が統一候補として推薦する無所属の木戸口英司氏(52)=花巻市=の新人3氏が立候補。広い県内を回り最後の追い込みに入った。気仙も県内他地区同様に与野党対決の様相を呈しており、田中、木戸口両氏が競り合ったまま最終盤を迎えている。石川氏は足掛かりがなく厳しい戦いとなっている。

 参議院の定数は選挙区146人、比例代表96人の242人で、今回の選挙ではそれぞれ半数の選挙区73人、比例48人が改選される。東日本大震災後は2度目となる今回は、先月22日に公示され、選挙区で225人、比例代表で164人が立候補している。
 与党は勝敗ラインを改選議席過半数の61と位置付け、選挙区で全国で32ある改選数1の「1人区」の結果が大きく反映されるとして注目される。
 その一つとなっている岩手選挙区に立候補した3氏は、現政権による経済政策アベノミクスや平和安全法制のとらえ方をはじめ、震災復興も訴えの大きな柱として、それぞれ県内各地に選車を走らせながら支持の広がりを目指している。
 田中氏は平成25年の前回選に続く挑戦。参院岩手選挙区では24年ぶりとなる議席獲得を目指す自民が昨年11月に公認。前回戦った無所属の現職・平野達男氏が支援に回っている。
 気仙では、橋本英教衆議院議員や佐々木茂光県議、各市町支部、比例代表との連動を明確にする公明の支持層が、運動の中核をなしており、「復興完遂には政権の安定と確かなパイプ役が必要」と熱を込める。公示に前後して高木毅復興大臣ら応援弁士が入っており、支持拡大と悲願成就に躍起となっている。
 従前から一定の支持がある住田町のほか、大船渡市でも浸透。公示後に同市内で行った街頭演説には、自民、公明の支持者のほか、前回選で平野氏を応援した企業経営者らの姿も。陣営では「以前より環境はよくなっていると言えるが、確実な手応えがあるとまでは言い切れない」と表情を硬くして臨む。
 木戸口氏は、小沢一郎衆議院議員と行動を共にしてきた生活の現職・主浜了氏の勇退表明を受け、4党間での協議を経て5月に統一候補として擁立された。昨秋の統一地方選に際し、野党共闘の源流になったとも言える達増拓也知事が積極支援。政権批判の受け皿としてのアピールも強くする。
 気仙では、推薦各党または主浜氏を支持してきた市議、町議らが中心となって活動。民進県連代表の黄川田徹衆議院議員や同役員の田村誠県議会議長が支え、労働団体なども応援姿勢にある。主浜氏や共産国会対策委員長の穀田恵二衆議院議員らも駆け付けている。
 基盤に厚さを誇り各市町で支持を広げるが、生活系の関係者は「共闘ではあるが、それぞれ動いている側面が強い。これまでの合流、分裂といった流れの中で、組織力は落ちている」との見方に立ち、気を緩めていない。
 共産は当初選挙区に擁立する予定だった吉田恭子氏(35)=盛岡市=を統一候補決定後に比例へ回した経緯があるが、比例については各党ごとの対応が柱となっている。
 石川氏は、消費税減税や国防強化、マイナンバー制度廃止などの訴えを強くし、与野党ではない「第3の選択」を呼びかける。気仙には公示後複数回足を運んでいるが、組織立った動きはなく支持に広がりを欠いている。
 前回選、岩手選挙区は現職で復興大臣の実績を持つ平野氏に、田中氏を含めた新人5人が挑む構図で行われ、平野氏が24万3368票を得て当選。
 以下、田中氏16万1499票、生活の関根敏信氏9万1048票、民主の吉田晴美氏6万2047票、共産の菊池幸夫氏4万6529票、幸福の高橋敬子氏8322票となった。
 気仙では平野氏が1万4138票、田中氏7996票、吉田氏5065票、関根氏4358票、菊池氏3038票、高橋氏417票という結果だった。
 当時、平野氏は民主を辞して無所属で臨んだ。気仙では明確な支持基盤の構築は見られなかったが、民主や生活支持層の一部のほか、復興大臣としての経験から無党派層も取り込んだ。今回はこの「平野票」の行方が競り合いを抜け出す鍵を握るが、与野党双方とも「流れが読めない」と口をそろえ、決め手を探っている。
 また、全国的な注目区とされる一方で、気仙の有権者の間には「地元の人がおらず内陸の選挙という感じ」「選車があまり入らず実感がない」などと冷めた見方も。陣営関係者の中からも「有権者数から主戦場たり得ず、盛り上がりを欠いているのが現状。復興にかかる訴えの違いが、あまり浸透していないようだ」といった声が漏れ聞こえ、前回、気仙3市町平均でおよそ65%だった投票率はこれを下回るとの観測も出ている。