〝古里〟で育てる喜びを、シダ植物新品種「ケセンクジャク」/住田町(別写真あり)

▲ 住田での広がりに期待を込めた佐々木さん(左から2人目)=町役場

 

 気仙沼市在住の佐々木敬三さん(70)=陸前高田市竹駒町出身=が三十数年前に住田町で発見し、新品種として命名されたシダ植物の「ケセンクジャク」。26日に町役場を訪れた佐々木さんは、町の財産として多くの人々に栽培してほしいとの願いを込め、住民に数株を託した。佐々木さんはアツモリソウに並ぶ特産品化の期待とともに「古里のみんなが育てる喜びを」と思いを寄せる。

 

気仙沼の佐々木さん
町に寄贈、住民に株分け

 

 昨年秋には自作の小説「幌葉の砦」を町教委に寄贈するなど、気仙に思いを寄せ続ける佐々木さん。以前から、住田が誇る自然や景観に愛着があったという。
 教員時代の三十数年前、友人から案内を受けクジャクシダが自生していた赤羽根峠の中腹に出向いた。当時は数株あったが群生と言えるほどではなかった。数年後の再訪ではクジャクシダではなく、ヤマドリゼンマイが群生していた。
 しかし、すぐそばの斜面上の道路脇で目についたのが、数株だけ育っていた背丈3㌢ほどのクジャクシダの幼苗。それが後に新品種と分かり、ケセンクジャクとなる。
 佐々木さんは庭で育てていたが大きくならず、数年後に葉が縮れたように成長していることに気付いた。「〝いじけた〟クジャクで、いつかは普通になると思いほったらかしにしていた」と振り返る。
 その後、成長した葉の美しさに、貴重種ではないかと思いを膨らませた。再び発見した場所に出向いたが、道路拡幅整備によってコンクリート壁と化し、見つけることができなかった。 
 退職後、平成25年に宮城県から東北大学理学部の米倉浩司博士を紹介され、植物専門誌に連名で新種「ケセンクジャク」として掲載。「ケセン」としたのは、発見地が気仙郡住田町で、佐々木さんが気仙沼市在住であることが由来という。
 イノモトソウ科のクジャクシダは、日本を含む極東アジアや北アメリカで広く生育している。株元から何本ものワラビ状の芽が伸び、先端はクジャクが羽を広げたような形状になる。
 ケセンクジャクは茎が3分の1ほどに縮まり、「小羽片」と呼ばれる両側の小さな葉が密集。東北大や東京国立科学博物館の標本室になく、アメリカでみられる品種ともわずかに特徴が異なる。
 佐々木さんは「ちょうど波が崩れる瞬間のような外観。新芽の出る春に、盛り上がる噴水のように葉を広げる姿は、まさに見事」と、美しさを語る。
 寄贈意向を受け、町は栽培・管理役として世田米の大和田國清さん(81)、菊池誠一さん(54)、髙橋勇一さん(68)を紹介。役場で佐々木さんから株分けされた。菊池さんは「難しくはないと思うが、時間を見て手間をかけ、育てていきたい」と話した。
 発見された古里・住田の地で、町の花であるアツモリソウのように住民の間で栽培が広がり、親しまれる植物としての〝成長〟を望む佐々木さん。「みんなで頑張って育てていただき、笑顔になれるように」と、期待を込める。