〝地産地消建築〟高評価、BCS賞に役場庁舎/住田町

▲ 歴史と権威ある建築賞に輝いた住田町役場=世田米

全国で17件

 

 一般社団法人日本建設業連合会(会長・中村満義鹿島建設会長)による第57回BCS賞の受賞作品が決まり、東北からは唯一住田町役場が選ばれた。国内の優良な建築物を選ぶ歴史ある賞で、今回は全国17施設・開発(特別賞含む)が受賞。町役場は地元産材を活用したデザインに加え、周辺環境や地域との融合、供用開始後の利便性といった観点でも高評価を受けた。
 BCS賞は建築技術の向上や良好な建築資産創出を目的とし、昭和35年に創設された建築賞。国内の建築物・建築群で、供用開始から1年以上経過したものが対象となる。
 デザインにとどまらず周辺環境や街並みへの配慮、新しい試みへのチャレンジなど、建築の企画・設計・施工・維持管理に関する総合評価に基づき選考。建築主と設計者、施工者の三者を表彰する。選考委員は大学教授や設計分野の専門者ら12人で構成している。
 世田米川向地内に整備された町役場の建築主は住田町。設計者は前田建設工業㈱、㈱中居敬一都市建築設計、近代建築研究所、㈱ホルツストラ。施工者は前田建設工業と㈱長谷川建設。平成26年7月末に完成した。
 2階建ての純木造建築物で、主要構造部は集成材で構成している。町内面積の約9割、3万㌶超の森林資源を生かし、構造材の約7割で町産スギ、カラマツを使用した。
 主な特徴として、同連合会では「地元産木材と人材の地産地消に向けて町民が一体となって取り組むことで、地元で調達可能な木材を用いた独創的な『大スパンのトラス梁』『斜め格子壁』をはじめ、構造・意匠ともに優れた木造公共建築物を具現化した」と紹介。木造による印象のやわらかさや調湿機能、内部に広がる香りなど、供用開始後の快適性でも高評価を受けたという。
 町役場のほかに今回受賞したのは京都国立博物館・平成知新館(京都府京都市)飯野ビルディング(東京都千代田区)大手町タワー/大手町の森(同)など。この17施設を加えた受賞作品総数は910件。
 気仙では、第51回(平成22年)に大船渡市民文化会館・リアスホールが受賞して以来の快挙となった。
 表彰式は11月24日(木)に、東京・皇居前のパレスホテル東京で行われる。多田欣一町長は「権威ある賞を受けることができ、設計や施工に携わった方々に感謝している。町民には誇りとしてほしいし、職員には庁舎に負けないよう充実した住民サービスに努めてもらいたい」と話す。
 町役場は完成以降、木造構造に加え、太陽光や自然換気などエネルギー分野を含めた地域資源活用といった面から関心を集め、林野庁長官賞や県知事賞、カーボンニュートラル賞(建設設備技術者協会主催)などを受けてきた。役場内の町民ホールには、受賞記念の盾や賞状が数多く展示されている。