大船渡工場で電力卸事業、発電規模は国内最大/太平洋セメント

▲ バイオマスによる発電設備が建設される太平洋セメント大船渡工場=赤崎町

31年秋完成予定 、燃料は木質バイオマス

 

 太平洋セメント㈱(福田修二社長、本社・東京都)と電力供給会社のイーレックス㈱(本名均社長、同)は29日、大船渡市赤崎町の太平洋セメント大船渡工場内に新会社・大船渡発電㈱を設立し、木質バイオマスによる電力卸事業を行うことに関する株主間協定書を締結した。パーム椰子(やし)殻を主なバイオマス燃料とした、国内最大規模の発電設備を設けるもので、来月に新会社を設立後、発電所の建設に着手。平成31年秋に完成し、以後20年にわたる発電・売電を行う計画。太平洋セメント側は大船渡工場内での新規事業を通じ、地域経済の活性化や地元雇用の創出などにもつなげていきたい考えだ。

 

事業担う新会社も設立

 

 昭和12年に東北セメント㈱大船渡工場として操業を開始以来、セメント製造などを通じて市内の産業を支える太平洋セメント大船渡工場。平成23年の東日本大震災では施設の約7割が被災したが、いち早く復旧作業に着手。気仙両市などの災害廃棄物受け入れやセメントの安定供給に当たり、復旧・復興にも大きく貢献している。
 震災で被災した施設の中には、自家発電設備も。同社では復旧を検討したが、すでに設置から40年が経過していたため、設備の運転を休止。電力会社から電力供給を受けながら、業務を行ってきた。
 しかし、電力の単価高や社内工場の多くが自家発電設備を使用していることなどもあり、太平洋セメントは新たな発電設備の建設を検討。国による再生可能エネルギー固定価格買取制度の実施なども背景に、成長投資として木質バイオマスによる発電設備を建設し、売電にも取り組むこととした。
 発電所の建設から、電力卸供給事業に付帯関連する一切の業務を担う新会社・大船渡発電を8月5日(金)に設立。資本金は40億円で、出資構成は太平洋セメントが65%、イーレックスが35%となっている。従業員数は10人弱を見込む。
 建設する発電設備には、循環流動層ボイラと再熱式蒸気タービンを採用。発電出力は75メガワットと、国内最大規模となる。総事業費は235億円。
 燃料は、バイオマスを9、石炭1の割合で使用。年間発電電力量は約48万メガアットアワーで、一般家庭の約11万世帯分の電力消費量に相当。発電した電力は、全量イーレックスに売却する。年間約28万5000㌧の二酸化炭素を削減し、環境面にも配慮する。
 バイオマス燃料には、主にパーム椰子殻を使用する予定。併せて、太平洋セメントは燃料の多様化に対応するため、パームオイル搾油工程で従来廃棄されていたパーム空果房(くうかぼう)に着目した。
 サラヤ㈱、タイのリマテック・アンド・KSNタイランド社、マレーシアのグリーン・バイオマス社と協同で、パーム空果房の発電燃料化に成功。太平洋セメント本社によると、新たな発電所の大きな特徴が、このパーム空果房を燃料に利用する点という。パーム空果房とパーム椰子殻の混焼により、安定的な操業を確保していくとしている。
 これらの燃料は、海外から船で輸入。大船渡港から発電所へと搬入することから、同港の新たな活用にもつながることとなる。
 発電所は大船渡発電を設立後、建設に着手。31年秋の完成を予定しており、以後20年にわたって発電と売電に取り組む計画を示す。
 太平洋セメントでは、バイオマス発電事業を通じ、環境に優しい再生可能エネルギーの普及を促進。地元から新会社の従業員や燃料輸送などに付随する雇用の創出も見込んでおり、「東北復興の一助と地域経済の活性化に寄与していきたい」としている。