4期現職の去就焦点、任期満了残り1年/住田町長選

4期目の任期が残り1年となった多田欣一町長=町役場、3日夜の町防犯協総会で

4期目の任期が残り1年となった多田欣一町長=町役場、3日夜の町防犯協総会で

 住田町の多田欣一町長(71)=世田米=は、5日で町長在職15年を迎え、4期目の任期が残り1年となった。次期改選を見据え、去就に関心が集まり始めているが、現段階では意思を明らかにせず「出処進退は自分で決める」と語る。多田氏は町政課題解決や地域振興策をけん引するリーダーとして期待を集め続ける半面、今任期を集大成として見る向きもある。当面は、候補擁立の動きに大きな影響を与える多田氏の態度表明時期が焦点となる。

 多田氏は現在4期目で、今任期は平成29年8月4日までとなる。連続3期務めた菅野剛前町長の勇退表明を受け、13年に町総務課長を辞して立候補。無投票で初当選を飾った。
 その後、無投票で再選、新人との一騎打ちを制して3選を飾り、25年の前回選は無投票で4選。いずれも無所属での出馬で、連続4期は昭和30年からの町制下では最長となる。
 前回選を巡っては、多田氏後援会(紺野一夫会長)からの4選出馬要請を受け、立候補表明に至った。多田氏は「東日本大震災を受け、遠方の自治体やNPO、企業との連携ができている時であり、このつながりから生まれたパイプを断ち切りたくない」「町民所得の向上と人口減対策を一番大きな町政課題ととらえ、引き続き取り組みたい」と力を込めた。
 今回もこうした後援会の動きに合わせた表明になるのか、議会論戦の場で示すかは流動的だが、次期町長選の動向は現職の意思によって大きく左右される。多田氏は「今は、残りの任期を全力で取り組むという思い。出処進退は自分で決める」と語る。
 今任期では、木造の新庁舎が完成。業務の効率性向上に加え、地元産材や自然エネルギーを生かした構造は全国的にも注目を浴びる。さらには風情ある古民家や蔵を生かした住民交流拠点施設「まち家世田米駅」もオープン。前年度には町人口ビジョン、総合戦略、総合計画をまとめ、中長期的な視点に立った振興策も打ち出した。
 一方で、町から計約7億9000万円の公金融資を受ける三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)は、26年度以降年額約3100万円を償還する予定だったが、2期連続の赤字決算を受け、満額償還ができないまま推移。町は「森林・林業日本一のまちづくり」を掲げる中、基幹産業にかかわる両事業体の経営安定化が急がれる。
 償還期間は25年と長期に及ぶ中、持続可能な運営といった観点での道筋づくりも注目される。町議会6月定例会でも町議の多くが三木・ランバー問題を取り上げ、町当局と論戦を交わした。
 また、町内高齢化率は全国平均より大幅に高く、41%を超えた。医療・福祉の充実はもちろん、子育て世代の支援につながる保育・教育環境充実が急務。人口減少に歯止めをかける地域運営策や産業振興策も求められる。
 多田氏は自身の気力、体力に加え、これまで取り組んできた施策や地域課題解決の進ちょくなどをふまえて、総合的に判断するとみられる。具体的には、木造仮設住宅整備をはじめ独自で東日本大震災後方支援策を展開した経験を未来にどう生かすかをはじめ、世田米商店街や役場周辺の景観形成、三木・ランバーの早期経営安定化に向けた調整などが挙げられる。
 新人の立候補に向けた動きは表面化していない。多田町長の態度表明までは「情勢見極め」が続くとの見方が広がる。
 前回選で多田町長が4選出馬を表明したのは、投票約5カ月前の2月。15年前、菅野前町長の勇退表明は3月だった。早期表明への期待の一方で、近年の選挙は短期決戦の傾向にあり、町内では「(町長選)前年での表明は早いのでは」との声もある。本年度中に解決すべき町政課題も山積する中、例年、町議会で新年度予算案審議が行われる2~3月を選択肢の一つとしながら、決断を固めるものとみられる。
 住田では前回選以降、知事選、県議選、町議選と国政以外の選挙は無投票が続く。とくに町内で政治分野の担い手不足が深刻さを増す中、住民有志による立候補・擁立の動きが今後活発化するかも注目される。
 次期町長選は、昭和30年の町制施行以来17回目。平成25年の前回選は7月16日告示だった。今回も7月中旬から下旬にかけての選挙日程が予想される。
 7月10日現在、同町の有権者数(18歳以上)は5162人(男2500人、女2662人)。前回選の告示前日(20歳以上)と比べて215人少ない。