設計提案を住民に公開、移転新築の消防分署/住田

▲ 住田分署の新築移転予定地=世田米

2次審査に6業者
「木質の市街地」形成へ

 

役場内では6業者の設計提案を公開(写真を一部加工)

役場内では6業者の設計提案を公開(写真を一部加工)

 本年度と来年度の2カ年で大船渡消防署住田分署の移転新築事業を行う住田町は現在、公募型プロポーザル方式で設計業者の選定を進めている。住田分署は平成26年に完成した木造の役場新庁舎と野球場の間に用地を確保し、木造整備を計画。1次審査には町側の予想を上回る40業者が技術提案を行った。町が掲げる「森林・林業日本一のまちづくり」発信や周辺環境との調和にも意識を置く中、第2次審査に進む6業者の技術提案書や審査会を町建設工事では初めて一般公開とし、住民らの参画意識向上や関心喚起を図る。

 公募型プロポーザルは、公共工事で事業者を選定する入札方式の一つ。技術力や経験、プロジェクトに臨む態勢などを含めた提案書の提出を求め、内容を評価して設計者を決定する。
 世田米清水沢地内に構える現在の住田分署は、大船渡地区消防組合発足翌年の昭和49年に建設。敷地面積は888平方㍍、建物の延床面積は301・5平方㍍となっている。
 実施方針によると、現分署は老朽化とともに耐震性にも問題を抱え、施設も狭いことから署員の業務効率低下を招いている。更新時期を迎えつつある公共施設を徐々に集約し、まとまりある中心市街地形成を見据え、役場新庁舎に隣接する用地を取得した。
 町全体の防災機能を担うだけでなく、中心市街地における中核施設の一翼とも位置付ける。建設予定地周辺では、公共施設再編の動きが進む。役場旧庁舎や倉庫、蔵は本年度中に解体され、図書館などが入る生活改善センターは来年度以降の改築予定となっている。
 改築事業では可能な限り木質化を進め、役場新庁舎周辺に「木質の中心市街地」を形成する計画。また、気仙川対岸に広がる街並みとの関係も視野に入れる必要があるとしている。
 個々に施設を整備するのではなく包括的に取り組むべきとの観点から、中心市街地の整備方針を模索しつつ、各整備計画に反映させる議論の場として「デザイン会議(仮称)」の設置も予定。多岐にわたる要望に柔軟に対応できる体制が求められる。
 新施設は川向地内。施設条件をみると、敷地面積は4900平方㍍、延床面積は約800平方㍍。林業と木材関連製造業が基幹産業であり、森林・林業日本一のまちづくりを進めていることから、木造主体の構造とする。
 冷暖房設備は木質ペレットやチップを燃料とする機器を導入。太陽光、太陽熱利用も検討する。
 概算工事費は新築工事費が約3億円(備品購入費除く)で、敷地造成費は9600万円。30年4月の供用開始を目指す。
 第1次審査では40業者が技術提案書を提出。先月24日に審査が行われ▽ビルディング・エンバイロメント・ワークショップ一級建築士事務所▽SALHAUS一級建築士事務所▽le style h/Atelier Asami Kazuhiro一級建築士事務所▽SOY source建築設計事務所▽SUEP.▽ビルディングランドスケープ一級建築士事務所──が選ばれた。
 6業者の技術提案は、役場交流プラザで展示中。いずれの業者も、木質の良さを最大限引き出す内容となっており、訪れた住民らの関心を呼んでいる。
 12日(金)午後1時からは、役場町民ホールで2次審査会が開かれる。提案者による説明やヒアリングは、一般に公開。町建設工事での公開は初といい、木造での公共建築整備を進める過程で住民の目にふれる機会をつくり、地域活性化や参画意識の高揚を図る狙いがある。